GO WEST 待望の備前焼の見学 | 酒と散歩の日々                                               

 岡山の旅行記である。1月の中旬に出かけた。目的は2つ、「伊部で備前焼をみること」、そして「日生でカキオコを喰うこと」。

 ここまで初日(1泊2日の旅である)の伊部のことを書いてきた。

 いよいよ、備前焼の店やギャラリーへの突入である。

 

 ただし、断っておく。私は焼き物通ではない。骨董に目がなかったり、有名作家の作品を手に入れたいとかそんな気持ちは一切ない。純粋に、好きな焼き物をみて、気に入ったものを買いたい。

 特に好きなのは、この備前焼と織部焼である。その織部焼の里 多治見へは2021年に訪れることができた。この時だって、一番のお気に入りだったのは「○○円均一の中にあるいわゆるアウトレット品」だった。

 

 こんな私が備前焼を語るのはおこがましいが・・・

 備前焼は、釉薬をかけずに焼くのが最大の特徴であると思う。焼きの際に用いる薪の灰が高温で溶けて釉薬のように器にかかって、まさに偶然の色合いを造り出す自然の作風である。

 もちろん、有名作家の方は、器の造型にこだわったりするが私としては素直に造られた器の変幻な色彩を愛でたい。

 

 昨日書いた忌部神社から下ったところに、「天保窯」の跡があった。その名の通り、天保年間から昭和の初期まで使われていた窯らしい。

 

 

 文化財に指定されているようで、こんな建物で囲われていた。その金網の隙間からみてみると・・・

 

 

 窯の入り具との様子が見てとれた。

 

 そこから少し下ったところが、備前焼を扱う店の並ぶ通り。いや、ここだけではなく、街中にたくさんのこうした店やギャラリーが並んでいる。

 

 最初にその戸を開けたのは、「木村興楽園」。店の方の姿はなく、そっと並べられている器を鑑賞した。

そこでもう心の琴線に触れる器があったのだが、ここで焦って買って、他の店でもっと欲しいものがあったら始まらない。

 「興楽園」を出て、並びにある「和泉」「陶吉」「柴岡陶泉堂」「一陽窯」「ギャラリー Kai」等に続けて入った。心惹かれたのは、「一陽窯」。お買い得品の中に「火襷き」の素敵なカップをみつけた。

 

 

 その値、1100円。

 火襷というのは、Wikiなどによれば、「作品を重ねて窯詰めする際に藁を巻いて作品同士が癒着しないようにしたのが始まりとされる、藁を巻き鞘などに詰め直接火の当たらない場所で焼くことによって、生地全体は薄茶色、藁のあった部分は緋色になる模様。薄茶色と緋色のコントラストが端麗で人気も高い。」とある。元は作陶したものがくっつかないように入れた藁で模様が生じたもので、現在ではあえてデザインの1つとして工夫して藁を添える作家の方もいらっしゃるようだ。

 その風合いがいい。もうこれを購入することに決めた。

 

 お店の方に会計をお願いすると、この「一陽窯」では店舗の裏手に登り窯があって見学もさせていただけるという。願ってもないお話。梱包の時間を使って見学をさせていただいた。

 

 

 火を焚くところ。中にも入らさせていただいた。

 

 

 梱包を終えたお店の方がこちらにいらっしゃって、お話をしてくださった。

火を入れるのは年に2回。「窯詰めに約10日、窯焚き約10日、さまし10日、窯出し期間 約1ヶ月で、その間に水漏れがないか等仕上がりを確認する」という。

 ちょっと感動。さらに、この「一陽窯」で数品書い足したら、備前焼の小さなカエルをいただいた。さらに、別のお値打ち品の籠の中から1つずつお持ちなさいという(つれあいと2人なので2つということ)。

 いやいや、ほんのわずかの金額しか支払っていない。それでもお言葉に甘えて、お皿を一枚。

1ヶ所に泡が入ったとかで、そこが膨らんでしまっている皿。でも、それもまた味わいがある。

 どうもありがとうございました。

 

 そこから、最初の「木村興楽園」に戻る。やっぱり最初にみたぐい飲みが一番そそられた。

 

 

 こういう茶碗もなんだけどね。

 そのぐい飲みは、内側に薄く火襷のような筋が入った素朴な形のもの。家に帰って、早速それで酒を汲んだ。唇が幸せだ。

 

 その後は、伊部駅の上の階にある「伝統産業館」へ、各窯元や作家さんの作品が並べられている。

 

 

 この火襷なんかも素敵なんだけどね。技巧なんだろうけど、私の個人的な感覚としてはこういう技巧は邪魔な気もする。生意気なやつだなぁ。

 でも、欲しくなる作品もいっぱい。ただ、値札をみてため息。

 

 

 そうだ。散策の途中、マンホールのデザインに気が付いた。「備前焼のふる里」の文字入り。狛犬さんは昨日書いた天津神社ものを模したのだろうか。

 

 14時、赤穂線に乗って、岡山駅へ戻る。

そのホームからは、南大窯跡が見えた。昨日書いた北大窯跡とともに国の指定史跡となっている場所である。