市民酒場「常盤木」 | 酒と散歩の日々                                               

 横浜には、市民酒場の暖簾を下げる居酒屋が三軒ある。他の地域では、大衆酒場となるところを、横浜では、市民酒場と名乗っていたそうだ。たくさんあったその中の残った三軒。

 これまでにそのうち、二軒は訪れた。神奈川の「みのかん」と子安の「諸星(暖簾には市民酒蔵と入っている)」。

 

 先週、最後の一軒を訪れた。実をいうと、その前の週にも店の戸をあけたのだが、予約の宴会で満席といわれてしまっていたのだ。


 戸部の駅から歩く。場所は、高島町と桜木町のちょうど中間あたり。その昔、今の横浜スタジアムのあたりに隆盛を誇った遊郭があり、岩亀楼という大きな店があったという。その店の遊女が静養する寮がこの界隈にあったことから、岩亀横丁と名付けられた通りがあり、ここに「常盤木」がある。


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 通りには、「岩亀稲荷」が。

戸部方面から行くと、その少し先に「常盤木」の看板がみえてくる。


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 この夜、がらりと戸をあけてみると、まだ他の客はおらず、カウンターに席を取ることができた。

下がっている品書きの札をみる。「あなご天」250円、安い。まずこれにしよう。それからっと。

確か酒場放浪記で吉田 類さんがこの店を訪れた時、「しうまい」を注文していた。これも注文しよう。

 壜のビールとその二品を頼むと、お通し。

この「きんぴらごぼう」が、歯ごたえといい、味の濃さといい、ど真ん中。美味い。

お代わりしようか、真剣に悩んだ。


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 「あなご」も揚がってきた。1匹付け、しかもこの大きさでこの値段。安すぎる。

もちろん、口に入れれば、申し分のない美味さ。 「しうまい」もくる。これも熱々で美味い。ビールもすすむ。

 で、ホッピーを。ついでに、ポテサラ。


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 居酒屋のポテサラを注文するのが好きだ。変わりがないようにみえて、各店で色々工夫があり、それを味わうのが楽しみだ。「常盤木」のポテサラは、極めてオーソドックス。イモはねっとりとつぶされ、やや酸味が強い味付け。これも好みのバランス。


 そうこうするうちに、他のお客さんも入ってきた。


 にぎやかになった店内。こうでなくちゃ。


 三軒の市民酒場を訪れて思うこと。こうして残っている店は、どこも店自体に味がある。何度でも訪れたくなる雰囲気があり、それがどこか一点の何かがあるわけではなく、トータルの魅力としかいいえないその点は共通している。「みのかん」「諸星」「常盤木」、全くタイプは異なるのだが。


 どの店も、またすぐにでも行きたくなっている。そう思いながら、これを書いている。


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