『希望の火を』 | 喫茶店の書斎から

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コーヒーカップの耳

三年前に、ドリアン助川さんの小説『あん』を読んで感動し、昨年映画化されてそれを観てまた感動した。
それ以来、ハンセン病について関心が。
で、昨日「トンカ書店」さんでこの本が目についたので購入しました。
塔和子さんの詩集『希望の火を』です。
彼女はハンセン病の詩人。
知ってはいましたがこれまで読んだことがありませんでした。
今まだ読んでる途中ですが、気になった詩。
「映像」です。ハンセン病の詩人の作と知って読むと感慨が。


そしてこれは「旅」という詩。

この世の光に迎えられて

長い旅は始まった

母のひざから二歩三歩

生きる旅に立ち会った私の足

子どもの頃は隣の町へ

少し大きくなってからは

ハンセン病の診察のために

父に連れられ

福岡 東京 大阪と

各大学病院へ、それから

数知れぬ小さな病院へ転々と

受診の旅を重ね

つづまりは島の療養所におちついたが

そこは入ったら出られないところだった

思えばそこで五十年

黙々と日々を重ねて今日にいたった

そして

このたび「らい予防法」という囲いの壁は

とりはらわれ

天下晴れて自由の身となったこの喜びをだいて

どこへ旅をしようか

ここだあそこだ地の果てだ

思いは湧くがついて行けない体になった

けれどもまだ

果たし得なかった楽しい旅の幻影を

実現したいと

こんなにも希っている



身につまされます。