*関わった楽曲について
『だるまの家』
A: コーヒーカラーのライブで最初に聴いた時から惚れ込んでいた曲。平尾昌晃先生の流れを汲む新演歌と勝手に解釈。サンバやマラカトゥなどの様々なリズムを試みた結果、 ポルトガル語圏でブラジル音楽の影響下にもあるアンゴラ、 カーボヴェルデ辺りのムードに決定。録音用の打ち込みをベースにギターを10本ほど重ね、ギター低音の対旋律はわざとコード、メロディにぶつけることでディストピア感を出す(現実の群馬はディストピアではない)。カバキーニョを4, 5本重ねる。十数種類のパーカッションを多重録音し、主にサルサ系が残る。天狗を表現しようと鉄板を叩いたり、ゴム管を吹いたり、いろいろ遊んだが全てカット。シンプルにまとめた。終わりの方、能管をサンプリングCDから取り込んだ、歌とパーカッションのみになる部分、あそこで主人公は一瞬失われた世界を垣間見るという設定。夢から覚めてなお激しく残響しつつラストへ向かう。
『釣り』
A: 「敗残者、ユーモア、社会風刺」の仲山節が冴え、Teshi氏の端正なメロディがついた佳作。訥々と綴られる、特に大サビ以降は感動的。「いつのまに~」のメロディ、「ま」のG音がコードE7の+9にあたる、これはサンバによくある「間違え」で親近感が湧いた。だるま同様、打ち込みをベースにギターとカバキーニョを数本重ね、ベーシックの段階でソフトシンセに鳴らせたパートを外部音源に置き換える。スティーヴィーワンダー的、無骨なアナログシンセ風サウンド、ヤマハのMotifでの音作りには丸2日を要した。シンバル、ハット、スネア、イスなど全て個別に録り「ドラムス」を構築。全体的にフィル・スペクターが仕上げたビートルズの“Let it be”を意識し、自分なりの「ボサノバ」を実現したつもり。最後のサビでドーンと鳴っている低音はスルドというサンバの最重要打楽器。
*トロピカリア製作所の特徴、目指す音づくりについて
A: 国内でサンバを解するエンジニアに一人も出会うことなく、仕方なしに自分で機材を集め、10年ほどかけてスタジオと称しうる設備となってきた。基本的には自作(サンバ)を録音するための場所だが、共鳴できるアーティストとはコラボしてゆく。私の手がけるものは全てサンバである。商品ではなく、作品をつくる。日本で一般的なサンバのイメージを覆す作品を作ってゆきたい。
*コーヒーカラーにコメント
A: 絶望的な内容の歌が多いのに一切それを感じさせない不思議な明るさと清涼感を伴うコーヒーカラーは個人的にも大ファンです。今後も名曲を生み続けてください。
ジョー・ダ・バビロニア
(歌/ギター/バンジョーカバコ/カバキーニョ/アレンジ/作曲/録音)
山口県出身。大学在学中、サンバに出会う。
平成4年、サンババンド“バランサ”に参加。
平成8年、バランサのメンバーとしてブラジルへ渡航、サンバ界のビッグネームをゲストに迎
えた1stアルバム『フェイジョアーダ・コン・スシ』にてデビュー。ブラジルの大手メディア
から注目を集める。
平成11年にバランサを脱退以降、サンバ国風化を提唱し、自身のユニット“アモールマイオール”にて2枚のアルバム発表。
また日本人初の「パゴーヂ」イベントを開催するなど、サンバ普及のため都内を中心に全国各地で活動中。