火曜ブックレビュー: いのちの文化人類学(波平恵美子,1996) | こころの臨床

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心理学は、学問的な支えも実践的身構えも、いずれも十全と言うにはほど遠い状況です。心理学の性格と限界を心に留めつつ、日本人が積み重ねてきた知恵を、新しい時代に活かせるよう皆さまとともに考えていきます。

「いのち」...生命という語から、わたくしたちに喚起させられる想い、死生観は、常に文化に依存するということを、文化を相対化する文化人類学の立場から多面的に語られています。

「いのち」という語をめぐって語られる優れた日本人論であると言えるでしょう。

 

心理学を学んだ人たちの中に、社会(政治・経済)に疎いというか、関心を持つ立場にはないとの根拠なき自認があるのは、かつての日本心理臨床学会の分裂を招いた紛争(第三次分裂に比べたら仁義はまだあったように思うのですが...)のトラウマが師弟間ミームとして伝承されているのでしょうか?

 

  政治を動かそうとする人々や組織にとって…{中略}…医療は、その政治の基本的理念や姿勢の内容を具体的に示す格好の手段なのである。( p142)

 

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