こころの臨床

こころの臨床

心理学は、学問的な支えも実践的身構えも、いずれも十全と言うにはほど遠い状況です。心理学の性格と限界を心に留めつつ、日本人が積み重ねてきた知恵を、新しい時代に活かせるよう皆さまとともに考えていきます。

一般社団法人 こころの臨床は、2017年の公認心理師法施行以来、文部科学大臣及び厚生労働大臣の指定を受け、公認心理師現任者講習会を提携法人共生の未来考究会と共に毎年開催して参りました。2020年度公認心理師国家試験は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、12月20日(日)に延期されました。これを受けて弊法人は過去の実績を活かし、2020年12月に国家試験直前対策のためのオンライン(ウェビナー)開講を実施しました。

〈第3回・4回・5回国試全過去問の解説・資料提供記事を毎日連載他〉
このブログの連載では、昨年度末に第1回追試からの「教育現場」シリーズを終え、前年度までの国試3回分の「教育現場」に関わる問題の検討を行いました。その後、2020年12月20日に実施された第3回国試問題を1日1問、悉皆検討し今後の国試の方向性(国の精神保健立法/行政に関わる指針と意向)を洗い出し、同年9月19日の第4回国家試験直前までに「出題基準」の全ての項目を網羅した総まとめを行いました。
これに引き続き2022年2月より現任者が受験可能な最後の機会である第5回国試支援のため、前年度第4回国試問題の悉皆検討を第5回国試本番直前の7月15日まで毎日投稿しました。現在は、第5回国試問題の全問検討を連載しております。各問ごとに参考リンク紹介等と留意が必要と思われる問題について解説しています。
この過去問研究の毎日連載と併せて、毎週火曜には精神医学・臨床心理学関連の専門書の中でも比較的一般の方々にも易しく読める本のレビュー、金曜には精神医療に関わる知見を広げるヒントとなりそうな映画のレビューを投稿しています。

〈受験対策直前講座の開催〉
2021年9月第1・第2週末に昨年度に続き開催いたしましたオンラインでの国試直前講座は、公認心理師国家試験を受験される方に限らず、スキルアップのために心理支援や制度の要点を簡潔に学びまた復習しておきたい方々にもご受講いただきました。現任者の方々には今回が最終の国試となる2022年は、6月25日~7月17日の週末に開催いたしました。
なお、次回の国試は来年5月の予定されているので、本年12月中旬ごろからオンデマンドとリアルタイム配信を併用する国試直前講座の開講を予定しております。

今後とも、全国のこころの支援の実務者またこころの支援を志すみなさま同士のお出会いが生まれる場を提供していきたいと願っております。

〈研究活動と研修会等の開催〉
国試過去問検討を含む調査研究活動を基として、弊法人の前身である一般社団法人日本臨床心理学会ならびに心楽の会の理念を、後進の方々への育成と支援に活かしていきたいと切に願うところです。
毎年開講の錬成講座は時季はいまのところ未定ですが、できるだけご参加がしやすい方式で単発の開催を視野に検討しております。
弊法人および提携法人の現任者講習会受講者の皆様に配信するニュースレターでは、関連団体の催しや公認心理師関連の制度の動向などもお知らせしております。

第五回公認心理師国家試験問題(2022年7月17日実施)

問103  DSM- 5 の身体症状症および関連症群における身体症状症につい て、最も適切なものを 1 つ選べ。

1) 身体の一部に脱力が起こる。
2) 視覚や聴覚の機能が損なわれる。
3) 疾患を示唆する身体症状を意図的に作り出している。
4) 重篤な疾患に罹(り)患することへの強い不安がある。
5) 身体症状に関連した過度な思考、感情または行動がある。

 

 

解は、5。

 

 ■ 300.82 Somatic Symptom Disorder は、DSM-5に新設された診断名。
以下は、アレン・フランセス(DSM-Ⅳの作成委員長)『精神疾患診断のエッセンス』の、過剰診断を警告する重要な指摘。

 

 身体症状に関する心配が臨床的に著しい苦痛または機能の障害に達している一群を括るために身体症状症という診断分類を新設した(DSM-Ⅳの身体化障害、心気症、疼痛性障害、鑑別不能型身体表現性障害を含む)。ただし、これは途方もなく包括的な分類であるため、明らかに妥当な場合のみにしか使用しないように筆者[アレン・フランセス]は勧めたい。(p216)

 臨床家は、DSM-5身体症状症の診断をあまりにも広範囲に下さない様に注意したほうがよい。そうでなければ、身体的な問題に精神疾患という誤ったラベルを貼ってしまう恐れがある。なぜなら、この診断は、⑴ある人の身体症状または心配が「すべて気のせい」だという。得てして誤った結論に飛躍させたり、⑵身体疾患に示して当然である正常な感情的反応に精神疾患という誤ったラベルを貼ったりしてしまうからである。
 身体疾患の患者に不適切な精神科診断を下すと、さまざまな弊害が発生する。例えば、スティグマが生じ、自尊心が失われ、介護者や家族が否定的な認識を抱くこともある。精密検査が不完全なまま途中で打ち切られるために、身体疾患や精神疾患が見逃されることもある。不適切な向精神薬が処方されることもある。また雇用の記憶に関して、不利益を被るといったことがある。
 身体疾患と精神疾患の境界は本質的に見きわめにくい。特に、多くの精神疾患が身体疾患と見紛[ママ]いやすい顕著な身体症状を示すため、なおさら識別が困難になる、もっとよい例は、パニック発作を起こす人が、めまいや息切れや動悸のために、往々にして膨大な数の検査を受けることである。実際には、これらの症状はパニック発作で起きる過換気によるものにすぎない。また、実際に抱えている疾患や怖ている疾患に対する感情的苦痛が、精神科的処置を要するほど強まる人もいる。しかし、身体症状を過度に心理的なものと見なすことや、病気に対して示す正常な反応に誤ったラベルを貼ることには、深刻なリスクがついて回ると筆者[フランセス]は考える。(p229)

 

🏁令和4年度版ブループリント「到達目標」該当:22 精神疾患とその治療
小項目例:趣旨も含め該当なし(初出)

 

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