公認心理師 過去問研究[1105] 第7回悉皆検討〈78〉タラソフ判例 職業倫理 | こころの臨床

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心理学は、学問的な支えも実践的身構えも、いずれも十全と言うにはほど遠い状況です。心理学の性格と限界を心に留めつつ、日本人が積み重ねてきた知恵を、新しい時代に活かせるよう皆さまとともに考えていきます。

第七回公認心理師国家試験問題(2024年3月3日実施)

問78  1976 年のタラソフ判決で示された、心理的支援における職業倫理に関わる事項として、最も適切なものを 1 つ選べ。 

1)  正義原則
2)  多重関係
3)  自己決定権
4)  多様性の理解
5)  秘密保持義務の適用範囲 

 

 

 

解は、5

 

そもそも1976年のタラソフ判決とは?

🐱参考論文:事実関係とその後の波紋・議論の詳細

博士論文 慶野 遥香(戸籍名:小松 遥香)

「我が国の心理職の倫理的態度に関する研究―国家資格化を巡って―」

を以下から検索して、ダウンロードできます。

 

また、このトピックで専ら参照されてきた飯塚和之先生(社会法学)の論文がJ-stageにありますので、参照ください。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/shiho1949/1986/48/1986_48_202/_pdf/-char/ja

 

これらから、理解いただけるように、このタラソフ判決は、カリフォルニア州最高裁判所が、示した、「治療者」に第三者保護義務を課すことを示した点が画期的でした。

治療者が治療対象とする「患者」が他者に対して及ぼす可能性がある「他害」を防止するために、被害者となる可能性のある第三者に対して、治療者は、保護(危険性の告知を含む)する義務を負うという判例が成されたのでした。

この後、「タラソフ論争」と呼ばれる波紋が生じ、心理専門職の倫理規定の例外例をどのように腑分けし、整理再編するかは、今後の問題です。

 

なによりも、2つの職能団体の倫理綱領では、まったく不十分ですので、国の政令レベルでの倫理ガイドラインまたは、医道審議会に公認心理師分科会を付設する必要があると考えます。

 

 

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