ブックレビュー箱庭特集⑳菅佐和子編『箱庭ものがたり』木立の文庫,2020 | こころの臨床

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心理学は、学問的な支えも実践的身構えも、いずれも十全と言うにはほど遠い状況です。心理学の性格と限界を心に留めつつ、日本人が積み重ねてきた知恵を、新しい時代に活かせるよう皆さまとともに考えていきます。

この本は、とても拾いもの。「拾いもの」などという失礼な言葉が浮かんだのは、アマゾンの評価*があまりに低過ぎた。

あ、でもいまのところ1人がレビューなし評価だった。

*ところで、アマゾンレビューっておトモダチの宣伝合戦みたいなことありますよね。

古書で入手した栞も外れてないぴかぴか本に「謹呈」の票と手書きでのレビュー願いなんてのがそのまま挟んであったのに遭遇したことも…😹。

 

これは、箱庭療法の展開系といえる、「箱庭-物語法(菅佐和子)」の実践報告集です。

200ページ弱の『箱庭ものがたり こころの綴り方教室』というタイトルから、すっかり甘くみてしまいました。

到着して手に取った時も四六版より少しだけ大ぶりでしかもハードカバー。

なんか思い入れが詰まった自費出版本ぽいという印象でした。

 

.....いやいや、これらの見込み/バイアスは、本の入り口の扉を開けさらに中側の扉へと進むうちに、霧散していました。


それぞれの扉には、ごく簡潔にこころに飛び込んで収まる銘が刻まれていました。


人に伝えたい文章を書くことを試みてきた一人として、言葉の選択と助詞の吟味を含めて伝えたいことを限られた紙数に集約するのがどんなに難しいか身に染みています。

 

この箱庭ー物語法の濫觴は、三木アヤ先生の発案にあるとのこと。三木アヤ先生は歌人でもいらっしゃいました。短歌(定型詩歌)を体現しているかのうような、この本のみかけの簡素さとコンパクトさを「枠」とする中身の豊穣さの大いなる意外性には感嘆。

 

ことに嬉しかったのは、本文中の箱庭写真がカラーであること。


これまでのいずれの箱庭関連学術書や体験事例本の類では、本文中の写真はすべてモノクロで、同じ写真のカラー版は本の扉の次あたりにまとめて挟み込んであるのですが、本文中にカラーで箱庭写真が入っている。

 

すごいにゃ~~~津田さん、ナイスジョブ!!創元社にいらっしゃった時には、例のハンドブックでの緊急修正の天狗技!!感謝してますにゃ~~~とここで鳴いていても多分届かないきゃ...。

 

コンパクトなのに、参考文献類すごく充実/懇切。

 

菅先生のお仕事に触れるのは久々だけど、生前の師匠が女性臨床家として尊敬されていた方々のお一人でしたので、菅先生の編著ということを縁に手に取れて幸いでした!!