ブックレビュー箱庭特集⑩ 心理療法論考 15/16章 河合隼雄 新曜社 1986 | こころの臨床

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心理学は、学問的な支えも実践的身構えも、いずれも十全と言うにはほど遠い状況です。心理学の性格と限界を心に留めつつ、日本人が積み重ねてきた知恵を、新しい時代に活かせるよう皆さまとともに考えていきます。

15章 箱庭療法の発展

「治療者は一切の解釈など与えず、その過程に内的に参画するのである。(p176)」

言語的に把握しようと試みることはよいが、「それによって意味がわかってしまったと断定するならば、誤りである(p177)」

 

16章 箱庭療法の転移

「強い」転移・逆転移に対して、「治療者が直接にクライエントに向かうのではなく、…[略]…自らの無意識へと深く沈んでゆく、そこにおいてこそ、クライエントの無意識と出会うところがあり、自己実現の力が活性化されるだろう。」それが「深い」転移・逆転移と示す。(p191)

 

この「深さ」については、第10章の精神療法の深さを踏まえての議論となります。ですので、この章もぜひ併せて復習しておきましょう。

 

そこでは、「深さ」は複雑さ・烈しさと取り違えてはならない(pp.129-130)、「妙な言語化をしない方が治療がすすみやすい…[略]…言語化のタイミングの判断は治療者の共感能力にかかっている(p131)」「治療者というものは、永遠に途上にあるほうがいい」等々...

名言が連なる章です。