ブックレビュー河合隼雄特集㉑:宗教と科学の接点 1986 岩波書店 | こころの臨床

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心理学は、学問的な支えも実践的身構えも、いずれも十全と言うにはほど遠い状況です。心理学の性格と限界を心に留めつつ、日本人が積み重ねてきた知恵を、新しい時代に活かせるよう皆さまとともに考えていきます。

この本はこれまでにも幾度か、ブックレビュー以外で紹介してきたました。要するに、「宗教」と「科学」の接点にあるのが、「心理療法」である、ということを、当時(1986年)なら堂々と書けたのです。

 

1995年以後は「宗教」は、ヤバいものという一般的なイメージが広まってしまって、その流れが現在も連綿と、「カルト」=「宗教」となっているようです。

 

何かの勧誘的な行動をするときに、「宗教ではありません」と断ったり、「仏教は宗教ではないから(安心)」と伝統仏教の僧侶が一般の方に言われたというエピソードが、すでに笑えなくなっているのが現状です。

 

そうなってくると、心理臨床家は、もはやこの河合先生の定義を自らの職責を表す言葉として用いることを捨てるしかないわけです。

 

 

なにしろ、国家公認の心理師は、国試試験・登録機関が発行した『公認心理師現任者講習会テキスト』に明記されているように、科学者でなくてはならないのですから。

 

 

ともあれこの著作は、縦書きで200頁の、数時間で読み終えられる御本です。

 

 

シンクロニシティ(Pliceのヒット曲で知っておられる方もいらっしゃるかも)の解説もありますし、河合先生の御本の中で繰り返し読みたい必読書の一つじゃないかと思っています。

(にゃんは、少なくとも3回は読んだ形跡がありました。)

 

河合先生を批判したい方も、ぜひ行間までも掘り下げる心意気でお読みいただければと願うところです。

 

 

週2(火・土)のブックレビューは、来週の土曜からは、箱庭関連書籍の週連載とします。

火曜には、河合隼雄先生の御本の紹介を引き続き行ってまいります。