公認心理師国試対策チェックポイント(20)ポジティブ感情(拡張ー形成理論) | こころの臨床

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「大項目9感情及び人格 中項目⑵ 感情が行動に及ぼす影響」への令和5年版の追加小項目「ポジティブ感情(拡張ー形成理論)」

 

🐱参考サイト:公的機関のサイトではないのですが、日経新聞系のサイトに、わかりやすい開設がありました。

 

wikiは不十分ですが、今後充実されないとも言えないので、とりあえずリンクしておきます。

 

論文としては、以下のp55〜に解説があります。大幅に引用させていただきした。

 

http://hdl.handle.net/10236/14503

 

「行動・生理指標を用いたポジティブ感情の機能や状態の解明 

                     ──拡張-形成理論とフローを中心として──」

大森 駿哉・片山 順一   『人文論究』66-1,pp.51-68,2016 関西学院大学リポジトリ

 

拡張-形成理論に関する実証研究

Fredrickson(1998, 2001)はポジティブ感情の機能を説明する理論として「拡張-形成理論(broaden-and-build theory)」を提唱した。これは,図 1 のような 4 段階で構築されており,その名称の通り,ポジティブ感情の経験によって思考-行動レパートリーが拡張し,その結果個人資源が形成され,人間のらせん的変化と成長を促し,結果としてウェルビーイングにつながるというらせん的な構造として説明されている。 ネガティブ感情は注意の範囲を狭めるのに対し,ポジティブ感情は注意の範囲を拡げ,その結果として認知,行動の範囲を拡げることが報告されている (Isen, Johnson, Mertz, & Robinson, 1985 ; Isen, Daubman, & Nowicki, 1987 ; Isen, 2002)。Fredrickson & Braingan(2001)は「拡張」機能の実証研究として,感情喚起映像を実験参加者に視聴させ,思考-行動レパートリ ーとして「私は◯◯したい」という文の空欄に思いつくことをできるだけ多く記入させ,記入した数をレパートリー数とする認知課題を実施した。その結果,ポジティブ感情を喚起した群はネガティブまたはニュートラル感情群に比べてレパートリー数が有意に多いことを報告した。また,大竹(2006)はポ ジティブ感情喚起による思考の拡張は,他者に向ける注意にも影響を与える結果を報告している。具体的には,ポジティブ感情喚起映像とニュートラル感情喚起映像を用いて,「Self(自分自身)」あるいは「Other(自分以外の人やもの)」について説明する文をできるだけ多く記述するという課題を用いた。その結果,ポジティブ感情の喚起によって Other に関する思考-行動レパートリー数が他の組み合わせに比べて増加を示した。これはポジティブ感情の経験によって注意が他者に拡がることを報告した研究結果である。

 

図 1 拡張-形成理論(broaden-and-build theory)の図式 大竹(2006, 2010)による(Fredrickson, 2002)より

  引用・翻訳