これまでの(長期にわたる)人生を通じて実にさまざまな人々と出会ってきたわけだけれども、大雑把に強く思うことは、人はぜんぶぜーんぶ何から何まで違うんだ!! よーく交流を深めれば深めるほど、誰も誰とも似ていない。
簡単にいえば人間は「個別性」で成り立っている、ということ。
(流行りの多様性をナンチャラとはまったく別の話)
「個性がある」という意味ではない。通常「個性」や「個性的」いう言葉を使うときには、その他一同と比較して、という前提がある。
そうではなく一人ももれなく、前提無き「個別性」によって人間は存在しているのだなあ、というしみじみとした実感。
倫理学、歴史学、考古学、医学、心理学、神経科学、人文地理学、文化人類学etc. 「人間とは何ぞや」を探究するあらゆる学問があらゆる観点から人間を収まりよく定義づけようと悪戦苦闘している。時代や文化、国や地域、環境や遺伝、性別や年齢など、異なる状況での類似と相違をとことん追求し細密にカテゴライズしてゆく。
たとえば心の問題。現在日本の精神科の診断のほとんどは、アメリカ精神医学会の「DSM-5(精神疾患の診断と統計のためのマニュアル第5版)」に基づいて行われている。このDSMの診断法はカテゴリー診断学と呼ばれるものだ。ある精神疾患において、典型的な症状をいくつか挙げ、そのうちのいくつ以上が揃っていれば診断できる‥という診断方法である。病因は問わず、症状のみで診断を行う。
このカテゴリー診断学はDSM-3(1980年)に初めて採用され、世界の精神科における共通言語となった。というのも、それまでの診断基準が「観察、記述、分類」➕「仮説的原因論」という、どうにも客観性に欠けたもので、お国柄や精神科医の解釈によって診断名が著しく異なっているという状況にあったからだ。
このカテゴリー診断学に至る精神医学界のすったもんだ経緯の詳細や、カテゴリー診断学の問題点や限界など、それだけでもひじょうに面白い状況にあるのだが、きりがないのでそれはまたの機会に。尚、もうひとつの診断基準として、WHOのWHODAS 2.0(世界保健機構障害評価尺度第2版)があるが、それは割愛。
でもって、DNS-3(1980年)で採用されたカテゴリー診断学であるが、その後DNS-3-R、DNS-4、DNS-4-TRという改定を経てDSM-5(2013年)となった。
最新のDNS-5の注目点は、それまでのDNS-3を踏襲した改定とは質的に大きく異なっているのが特徴。特に児童期の精神疾患に大幅な変更があった等々いろいろあるが割愛。
この最新改訂版で興味深いのは、判断基準によって病的状態と正常を完全に分けることは不可能、と白旗をあげている部分。
例えば私の経験した「うつ状態」という症状のケースでも、通院した複数の病院で、それぞれ異なる診断名がつくということはしばしばあるし、薬の処方がまったく異なることも稀ではない。
しかし圧倒的に感じるのは、同じ診断名をもケースにおいてもじっくりと話を伺ってゆくと、ひとりひとりの症状はそれぞれまーったく違う!!ということである。
うつ病になりやすい人の特徴ととして、うつ的思考パターンという捉え方がある。もちろんそれは膨大なデータから統計学的に導き出されたもので、確かにある状況において共通する思考パターンの傾向というのはある。しかし、それはその人の主な性質ではなく、全体を構成するほんの僅かな一部分に過ぎないし、その思考パターンの現れ方も同じものはない。
よくよく見極めれば一人ひとり個別に異なるわけで、改善方法も「コレにはこの方法でOK」と簡単に当て嵌められるものではない。
極端なことをいえば、改善方法は完全カスタムメイド、となる。
心理療法に限っていえば、信頼で成り立つクライエントと援助者というチームを組み、そのつど特別仕様の方法によって、最適解による回復を目指す作業、と考えている。まあこれはあくまでも私の個人的な方法論すぎないけれど。
そういったわけで、最高には程遠いけれど、私が最善最短の道と考える折衷主義のカウンセリングを心がけている所以である。
https://kokoroki.jimdo.com/折衷主義のカウンセリング理論-1/
散らかった話を元に戻すと、つまり、あらゆる面で、人間一人ひとりの存在は個別に異る。
外見も、思考も、行動も、遺伝子も、遺伝子のon/off も、情動も、脳システムと体の相互作用の仕組みも、圧倒的に一人ひとりぜんぶ違う。似ているようでぜんぜん違うのだ。
そういう生物なのだ。
だからこそ、自分とは異なる他人と縁あって、ほんの一部分であっても共通項を発見し共感し合えることは、ある意味奇跡に近い幸運なのだなあ。
といったようなことを、友だちが少ないが故に、とくにしみじみと感じる今日この頃。
そういえば、我が家の二桁に上がる歴代ハムスターも、全員外見も性格もまったく異なっていた。今いるロン(竜)君は、知能派ツンデレ食いしん坊である。