すべてはうまくいっている! 光と心の調和 -17ページ目

すべてはうまくいっている! 光と心の調和

横浜の心理カウンセラー ロキのつぶやきブログ
その人がその人らしく
『生まれてきてよかった!」
と思える人生のために。

映画もそうだが、小説のなかにも、どうしても批評の対象にできない作品というものがある。あーだこーだいっても、やっぱり(自己内比)ぜったい最高! としか言いたくない

誰でも、たとえ私と正反対の理性的・論理的な知性人であっても、理屈抜きのウィークネスというのはあるのではないか。

数日前に寝そびれて、久々にモンテ・クリスト伯(岩波版全7冊)を読み始めたらもう止まらなくなった。
もちろん大学生の居候はその間自炊さ ヾ(- - ;)オイ

もう数十、いや数百回は超えている ?ほど読んでいるが、今回も仕事外の時間をほとんど費やし、まさに寝食を忘れてぶっ通し3日間で読み終えた。

アレキサンドル・デュマという巨漢大食漢の破天荒オヤジは本当にすごいと思う。『モンテ・クリスト伯』『ダルタニアン物語』『鉄仮面』『黒いチューリップ』ざっと思い浮かぶ全てが面白すぎる。

 
でも、やっぱりダントツでモンテ・クリスト伯なのよ。
 
私がはじめてモンテ・クリスト伯に出会ったのは中学1年のときだった。
夏に日傘をさして近所の買い物に行くような父から『巌窟王』と『ゼンダ城の虜』は面白いよと薦められ、まあ絶対つまらんだろナと思いつつ4cmほどもある分厚いダイジェスト版『巌窟王』を買ったのが、終世の愛読書となるはじまりだった。
 
立て続けに3回繰り返し読んだあと、登場人物を片端からイラストに描いてほくそ笑んでいた。とりわけ丹念に書いたモンテ・クリスト伯が理想の男性像になった。思春期のはじめ、この物語によって人間のさまざまな型を学んだと思う。
 
ほとんどの翻訳は読んでいると思うけれど、山内義雄完訳の岩波版が気に入っている。まだ未読の方はAmazonでレビューを読んでいただければだいたいのストーリーは分かると思うが、前知識なしで読み始めた方がいいかもしれない。ふだん人に本は薦めないが、これは別。
 
 

すべてにスケールのでかい、著者アレクサンドル・デュマについての解説はこちらが面白い。ttp://tanizokolion.fc2web.com/dumas.html

 
 

たしか河合隼雄が子どものころ夢中になって読んだのが『巌窟王』だった。ずいぶんと影響を受けたらしい。主人公モンテ・クリスト伯が最後旅立つ前に言い残した台詞が、いまの自分の仕事そのものである・・・と、どこかで語っていた。


「(略)わたしのあなたへの行動の真諦をお知らせしましょう。それは、この世には、幸福もあり不幸もあり、ただ在るものは、一つの状態と他の状態との比較に過ぎないということなのです。きわめて大きな不幸を経験したもののみ、きわめて大きな幸福を感じることができるのです。マクシミリヤンさん、生きることのいかに楽しいかを知るためには、1度、死を思ってみることが大切です。(略)そして、主が、人間に将来のことまでわかるようにさせてくださるであろうその日まで、人間の叡智はすべて次の言葉に尽きることをお忘れにならずに。

『待て、しかして希望せよ!』

(岩波文庫/山内義雄訳)

 
「待て、しかして希望せよ!」あまりにも有名な台詞。
何を希望するのかは人それぞれだけれど、何も見えない真っ暗闇の中に居てもがすべてではないことは身を以て知っている。
 
 
 
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うつ病複雑な発症の要因


うつ病の発症メカニズムについては、未だ解明されていません。今の段階では、遺伝や体質、性格、環境、時代情勢、脳機能の低下など、さまざまな要因が複合的に関係していると考えられています。うつ病発症をどう捉えるかついては、専門家によっても見解は大きく異なっているのが実情です。

 
前回、うつ病にはさまざまな概念があり、その分類についてはいまだ流動的であることを書きました。大うつ病についても、症状による診断方法をDSMをはじめいくつかご紹介しましたが、それはあくまでも表層的な目安であって、それで正確な診断ができるかといえば、否と答える精神科医も多いのではないでしょうか。
 
ここでおまけとして、症状ではなく症状を引き起こす原因によるうつ病の分類について少し書いてみます。
 
 

イギリスの精神科医キールホルツや日本の精神科医の笠原嘉氏は、うつ病を原因論から捉え「心因性うつ病」「内因性うつ病」「身体因性うつ病」の3つに分類しました。この分類方法は古典的とも言えるもので、心理的な誘因がはっきりしていないものを「内因性うつ病」とし、心理的誘因が特定できるものを「心因性うつ病」と呼んできました。

 
 
しかし研究が進むにつれて「内因性」と「心因性」の明確な区分が難しくなってきており、「内因性うつ病」という概念に批判的な研究者が多いのも事実です
 
【身体因性(外因性)うつ病】
 
身体因性うつ病は、明らかな原因によって脳へ直接的・生理的に影響を及ぼし、その結果として生じる抑うつ症状をいいます。脳あるいは身体に生じた疾患や病変によって、二次的に抑うつ状態を引き起こしている場合です。下位分類として「症状性うつ病・器質性うつ病」とに分けられます。
 
 器質性うつ病‥‥‥脳血管障害や脳梗塞、脳腫瘍など脳自体の損傷が
          原因となって発症する
 
 症状性うつ病‥‥‥脳以外の身体疾患である甲状腺機能低下や、消化性
          潰瘍、
インフルエンザなどが原因となって発症する
         (ステロイドやインターフェロンなどの薬や毒物な
          どに
よって発症する場合を含む)
 
【心因性うつ病】
 
職場環境や対人関係のストレス、家族や親密な人を失う喪失体験など、はじめに心理的なストレスがあり、それに引き続いて起きる抑うつ症状をいいます。性格的なものや環境が、うつの発症に深く関係していると考えられています。
 
この心因性うつ病には、治りやすいものと治りにくいものがあるようです。情緒的ストレス心理的原因によって、さらに下位分類として「疲労性うつ病反応性うつ病・神経症性うつ病」に分けられます。
 
 疲弊性うつ病‥‥‥職場での悩みや対人関係による悩みなど、情緒性ス
          トレス
長い間らされるとで発症長期間にわた
          
る苦痛や精神的な疲弊限界に達
          する状態
 
 
 反応性うつ病‥‥‥家族など近親者との死別、失恋、自然災害の被災、
          犯罪被
害など、原因がはっきりと特定できる
症状
          が身体に出ることが特徴のひとつで、不
          不振などがある
 
  神経症性うつ病‥‥上記のように原因がはっきりしない、本人の抑圧さ
          れた無意
識的な神経症性葛藤が要因となるいわゆる
         「抑うつ神経症」
と呼ばれていたものもこのカテゴ
          リーに入る
 
 
【内因性うつ病】
 
特定の原因が見当たらないうつ病で、簡単にいえば、心因性、身体因性を除いたものを内因性うつ病と分類します。本来の大うつ病や双極性障害もこれに分類され、下位分類として以下の3つがあります。

双極性障害‥‥いわゆる躁うつ病
単極性うつ病‥‥うつ状態が繰り返し起きる
退行性うつ病‥‥中年期以降に発症
 
主に体質や遺伝的な要因によって引き起こされるうつ病と考えられてきました。とはいっても、多くは心理的ストレスや喪失体験等をきっかけとして発症します。したがって内因性と心因性の両者を区別することは実際にはとても難しいのです。

 
興味を引いたのは、心因性うつ病】の下位分類「神経症性うつ病」のカテリーに抑うつ神経症を入れていることです心因性うつ病が性格的なものや環境の影響が大きいことからしても、もしかすると心因性うつ病はこれまでさんざん書いてきた次の定義にあてはまるかもしれません。
 
気分変調性障害 or 気分変調症(dysthymia)」≒「抑うつ神経症(neurotic  depression)」≒「慢性小うつ病(chronic minor)  心因性うつ病 」:「非定型う病」・・・ということです。
 
 
今回ご紹介した「うつ病を原因論から捉える分類」は、現在も診断名として用いている精神科医も少なからずいらっしゃるようですが、現状に即して考えると、少々曖昧な面があるかもしれません。あくまでも診断名としてですが。

だからといっ
て、精神疾患におけるDSM(精神疾患の分類・診断のマニュアルと基準)やICD(国際疾病分類)が適正かといえばそんなことはなく、結局は現時点での、診断する側のためのラベリングに過ぎないのですけれど。。
 

次回から(相変わらず不定期ですが)、うつ病についての様々な研究結果をもとに、現状におけるうつ病の実態や治療法について書いていくつもりです。
 

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ホメオスタシスという言葉を聞いたことがあるでしょうか。
ホメオスタシス(homeostasis)、日本語では「恒常性」といいますが、生物のもつ基本的な性質のひとつで、体の状態を常に一定に保とうとする働きをいいます。簡単にいえば、転んで膝小僧を擦りむいても、いずれ血は止まり皮膚が再生して元どおりに治ってゆく、という生体機能です。

ホメオスタシスは心の状態にも機能します。
 
人生には様々なことが起きます。卒業、就職、失恋、結婚、出産、失業、離婚、災害、戦争、離別、病気・・・もっと些細なことであっても、人はそのときどきの出来事やきっかけによって感情が動き、気分が良くなったり、悪くなったりします。つまり、悲しいことや辛いことがあっても、人はどうにかしてそれを乗り越えて、やがてまたいつもの自分に戻ろうとします。

「いつもの状態」というのを、その人の「ベースライン baseline(基準、安定値)と考えます。そして、そのベースラインへ戻ろうとする心の働きもホメオスタシス(恒常性)です。

いつも上機嫌で溌剌とした気分がベースラインの人もいれば、つねに不満いっぱいで何かにつけ面白くない気分がベースラインの人もいます。いつも不安でいっぱいの悲観的な気分がベースラインの人もいます。

では、この気分のベースラインは、個々人にとってどのように決まるのでしょうか。
生まれつき(遺伝)なのか育ち(環境)なのか?

「もてあます心・うつ病編」で紹介した、精神医学・人類遺伝学のKenneth S. Kendler先生の研究グループが、ここでも双子研究を使って三大陸12,000人以上を対象に調査しています。
 
データによると、同じ遺伝子をもつ双子の気分のベースラインの差は、1歳から青年期、成人期を経て60歳になるまで、徐々に離れてゆき、その後ほぼ横ばいになるという結果を示しています。つまり、幼少時から子ども時代は遺伝(生まれ)に因るけれど、歳をとるに従って徐々に個人的環境(育ち)の影響が大きくなというものでした。

この「遺伝(生まれ)か? 環境(育ち)か?」という問題については、そのうちに詳しく書くつもりですが、だいたいの精神疾患において「遺伝的要因がベースにあり、それが発症するかどうかは個人的環境(育ち)による」という研究結果が出ているようです。

話をホメオスタシスに戻します。元の状態に戻ろうとする働き「ホメオスタシス(恒常性)」は、「変化を拒む」とも言い替えることができます。つまり、人(生物)は変化を嫌うというのが基本にあるとうことです。

それに関連して、心理学で抵抗(治療抵抗)という概念があります。「抵抗」というのは、病気を治したい、苦しみから逃れたい、幸せになりたい・・はずなのに、そのための治療や心理療法に抵抗する心の働きをいいます。

たとえば。改善の兆しが見えてくると、薬を飲まなくなったり、カウンセリングをキャンセルしてしまったり、嬉しいとか幸せという感情を無意識のうちに拒否したり、つまり変化することへの抵抗ですね。心のベースラインがプラス(健康)の状態にあるか、マイナス(病的)の状態にあるかで、ホメオスタシスも抵抗も、同じ心の働きを示しているのです。

いわゆる大うつ病は数ヶ月~1年ほどでもとの元気な状態になって社会復帰できる疾患です。それは、一般的に大うつ病になる人はもともと心のベースラインが健康であり、その状態へ戻ろうとするホメオスタシスが働くからです。

ところが、パーソナリティ障害など、長年の経過のなかで歪んでしまった心の状態がベースラインとなっている人には、抵抗によって健康な心になることを拒否する現象が生じます。つまり、歪んだ状態が当たり前で、健康な心の状態は未知の領域になるわけです。したがって、治る=元の状態に戻るということではないのですね。

今まで辛くても苦しくても何とかやってきたのに、あえてよく知らない未知の世界に足を踏み入れることは、新たな不安や恐怖と向かい合うことでもあります。それならつらく苦しい状態でも、今のままでいるほうが安心だし楽、と感じてしまうわけです。

このように、心の状態がよくなってくると、無意識のうちに、逆に元の苦しい状態に戻ろうとしてしまうケースは意外に多いのです。

では、どのように改善を目指していくとよいのか。
パーソナリティ障害などの場合は、じっくりと腰を据えた長期のカウンセリングによって、抵抗による引き戻そうとする力に対抗しながら、じわじわとベースラインそのものを健康な状態に近づけてゆく必要があります。短期心理療法で一時的によくなっても、カウンセリング終了後に再び悪化してしまうケースが多いのは、この元に戻ろうとする抵抗が働くからなのです。

心の病を抱えた人に、ただやみくもに「変わらなくちゃ!」と変化を押し付けることは、とてつもなくきつい思いをさせてしまう場合もある・・ということを知っておくといいかもしれません。

 
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気分変調性障害:限りなく性格に近い?


気分変調障害の診断基準にほぼ重なるけれど、さらに、うつ症状の経過があまりにも長く、ほとんどが思春期や青年期から始まって、ときには少しよい状態の時期もあったりしつつ、何年も、何十年も続くことが珍しくないという抑うつ状態があります。「精神疾患」にかかっているというよりも、もはやその人の「性格の一部」になってしまっていると表現したほうがしっくりくる症状の人たちの存在です。

そんな状況もあって、正式な疾患分類から「抑うつ神経症」「慢性小うつ病」といった、慢性的な気分の落ち込みが続くタイプの抑うつ症状の存在を完全に無くしてしまうのは、米国精神医学会もさすがに「ちょっと不味いんじゃネ?」と思ったかどうか、気分変調性障害とは区別するかたちでの、別の診断基準をつくろうという議論がなされました。
 
その結果、「抑うつ神経症」「慢性小うつ病」であった「性格的に落ち込みやすい人」のパーソナリティの問題を、正式な「パーソナリティ障害」には分類されない、「特定不能のパーソナリティ障害」の下位分類として「抑うつ性パーソナリティ障害」「受動攻撃性パーソナリティ障害」という、2つの暫定的パーソナリティ障害に分類したのでした。
 
尚、WHO(世界保健機構)のICD-10(国際疾病分類)の段階では、「他の特定のパーソナリティ障害」に分類しています。
 
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【抑うつ性パーソナリティ障害」の暫定的診断基準(DSM-Ⅳ)】より
 
A. 抑うつ的な認知および行動の広範なパターンで、成人期早期までに始まる。以下のうち少なくとも5項目(またはそれ以上)を満たす。
 
(1)通常の気分は、憂うつ、悲観、快活さのなさ、喜びのなさ、不幸感が
   優勢である。
 
(2)不適切さ、無価値感、および低い自尊心についての確信が自己概念の
   中心を占める。
 
(3)自分に対して批判的で自責的で、自分で自分をけなしている。
 
(4)くよくよ考え込み、心配してしまう。
 
(5)他の人に対して拒絶的、批判的、非難がましい。
 
(6)ものごとに対して悲観的である。
 
(7)罪悪感または自責感を感じやすい。
 
B.  大うつ病エピソードの期間中にのみ起こるものではなく、気分変調性障害ではうまく説明されない。
 
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【受動攻撃性パーソナリティ障害」の暫定診断基準(DSM-Ⅳ)】より
 
A. 適切な行為を求める要求に対する拒絶的な態度と受動的な抵抗の広範な様式で、成人期早期までに始まる。以下のうち4項目(またはそれ以上)を満たす。
 
 
(1)日常的な課題(社会的、職業的)を達成することに受動的に抵抗す
   る。(したくないこと、できないことを「できません」と素直に自
   己主張するのではなく、やれない、やらないことで、間接的に抵抗
   を示す)
 
(2)他人から誤解されており、適切に評価されていないと不満を述べる。
 
(3)不機嫌で論争をふっかけがち。
 
(4)権威ある人、高い地位にある人を、不合理に批判し軽蔑する。
 
(5)明らかに自分より幸福な人に対して嫉妬や羨望、憤りを表現する。
 
(6)個人的な不運を誇張して愚痴を言い続ける。
 
(7)敵意に満ちた反抗と悔恨の間を揺れ動く。
 
B.  大うつ病エピソードの期間中にのみ起こるものではなく、気分変調性障害ではうまく説明されない。
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つまり上記2つの項目は、昔からあった抑うつ神経症の背景的要因である性格的問題を、症状や行動的特徴だけから記述したもので、一応「気分変調性障害」とは区別されています。しかし、そもそも「気分的に落ち込みやすい性格の人」と「気分変調性障害」とは本質的に別の疾患なのか?について、専門家の間では長いこと議論がありました。
 
もてあます心Ⅰ-うつ病(1)の「うつ病にもいろいろある」では、抑うつ状態になる精神疾患を、以下のように分類されると示しました。
 
● 狭い意味の「うつ病「大うつ病性障害(major depression)」=「メランコリー型うつ病(melancholic depression)」 昔ながらの「うつ病」
 
「気分変調性障害 or 気分変調症(dysthymia)「抑うつ神経症(neurotic  depression)」「慢性小うつ病(chronic minor  depression)」「非定型うつ病」
 
もともと「気分変調性障害」とおなじくくりだった「抑うつ性パーソナリティ障害(抑うつ神経症・慢性小うつ病)」軽い症状によるプチうつ病であり、狭い意味でのうつ病(大うつ病)に近い疾患なのか?

それともパーソナリティ障害に近い性格的な問題なのか?
 
この問題を解明する手だてとして、精神医学・人類遺伝学のKenneth S. Kendler先生の研究グループが、双子研究(約12000組)を使って、疾患に遺伝的要因(生まれ)個別環境要因(育ち)がどのように作用しているかを調査しています。それによって、「生まれと育ち」が原因論的にどのように関連している疾患なのか、あるいは関連していない疾患なのかを推論します。
 
 
まず、「パーソナリティ障害(抑うつ神経症・慢性症うつ病)」「大うつ病」との比較において、「生まれと育ち」が原因的に近いかどうか?

結果は、「パーソナリティ障害」の「原因」となっている、遺伝的要因(生まれ)も個別環境要因(育ち)も、同じようにうつ病の要因となっていました。しかしうつ病には、別の遺伝的要因と環境要因が大きく関係しており、基本的に症状的には似ていても、原因論的には別の疾患であることを示唆していました。
 
つまり、「抑うつパーソナリティ障害(抑うつ神経症・慢性症うつ病)」をベースに、「うつ病」を生じることはあるが、基本的には別の疾患だということを示しているわけです。
 
抑うつ性パーソナリティ障害(抑うつ神経症・慢性小うつ病) 遺伝的要因1(0.63) 個別環境要因1(0.78)
 
大うつ病性障害遺伝的要因1(0.32) 個別環境要因1(0.27)
+ 遺伝的要因2(0.48) 個別環境要因2(0.78)
 
さらに、米国精神医学会が作成したDSMで、精神疾患にあげられている「疾患」の背景には、どのような遺伝的要因が共通して存在しているか、あるいは別々に存在しているかを広範囲に調べたデータがあります。
 

 

 

 

 

 


その結果を見ると、やはり「気分変調性障害」は米国精神医学会のDSM-Ⅴ(精神疾患の分類・診断のマニュアルと基準)では「第Ⅰ軸(疾患)」に分類されていますが、遺伝的要因からその原因論を推論すると、むしろ「第Ⅱ軸(性格)」の範疇に入ると考えた方がよさそうなのです。ついでにいうと、「社交不安障害」もDSM-Ⅴでは「第Ⅰ軸(疾患)」に分類されていますが、これも「第Ⅱ軸(性格)」、つまり性格により大きな問題があると示唆されているのですね。
 
もともと「気分変調性障害」「慢性小うつ病(chronic minor  depression)」とも呼ばれていたので、うつ病の軽いものと思われがちですが、その実態は「抑うつ神経症(neurotic  depression)」「抑うつ性パーソナリティ障害」とも同じくくりに入るものです。

したがって、上記のデータ
から推論されることは、「気分変調性障害」も疾患というよりは、むしろ「性格的な問題」と捉えた方がよく、疾患である大うつ病とは異なる、かなり治りにくい、難しいタイプのうつ症状であるといえるのでしょう。
 
つまり、
 狭い意味の「うつ病」「大うつ病性障害(major depression)」=「メランコリー型うつ病(melancholic depression)」: 「定型うつ病」
      ↓
     疾患
  
「気分変調性障害 or 気分変調症(dysthymia)」「抑うつ神経症(neurotic  depression)」
「非定型うつ病」
「慢性小うつ病(chronic minor  depression)」「「抑うつ性パーソナリティ障害」
 
      ↓
    性格の問題
 
ということ・・・・なのかもしれません。
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参考文献
(米国精神医学会機関誌「アメリカン・ジャーナル・オブ・サイキアトリー /Am J Psychiatry 」(2007/164: 1866-1872 )
「うつ病性パーソナリティ障害と大うつ病性障害との関係:集団ベースの双子研究」
 
 
 
(米国精神医学会機関誌「アメリカン・ジャーナル・オブ・サイキアトリー/ Am J Psychiatry」 (2011/168: 29-39)
 
 
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気分変調性障害:「神経症」?「新型うつ病」?

前回の記事では狭い意味でのうつ病、
いわゆる昔ながらの「大うつ病性障害(major depression disorder)」について、その症状と診断基準について書きました。それに対して、ここ数十年で急激に増えてきているのが、「気分変調性障害 or 気分変調症(dysthymia)」と呼ばれる抑うつ症状です。今回は、その「気分変調性障害」についての考察です。

前々回の「うつ状態にもいろいろある」の記事でも少しふれましたが、「気分変調性障害」による抑うつ状態を、一部の人たちは「新型うつ病」と呼んだりしていますが、昔は「抑うつ神経症」「慢性症うつ病」、あるいは「神経症性抑うつ状態」にカテゴライズされていた抑うつ状態を指します。

しかし現在の正式な疾患分類の中からは、「抑うつ神経症(neurotic  depression)」「慢性小うつ病(chronic minor  depression)」と言った疾患名は消えています。なぜなら、このように呼ばれていた抑うつ状態が実は「神経症」であり、「神経症」である以上、本人の「性格的な要因が大きい」という前提に立っているからです。

もう少し詳しくいうと、本人の「生き方」や「対人関係の持ち方」に「独特の葛藤やストレスを生じやすい性格的な要因」がもともとあって、その結果、日常生活の中で対人関係のうまくいかない状況を持続的に抱えるようになり、不適応感や抑うつ感を慢性的に生じてしまう問題・・・を指して「神経症」と呼んでいたのです。

ところが、米国精神医学会による精神疾患分類DSM-Ⅲの頃から、精神疾患の分類を国際的に共通のものにして、どのような理論的背景の専門家でも理解できるように、患者の背景理論や症状の主観的解釈にたよる部分を極力排除し、表面上に表れる症状や行動だけから記述できるようなものにしていこう、という流れになってきました。

それにともなって「神経症」という概念は、そこに「(性格的な要因に基づく)心の葛藤によって生じている」という理論的背景、原因論、症状の解釈の仕方が入っているため、排除されることになったのです。

以上のようなわけで、現在の正式な疾患分類の中には「神経症」という言葉は出てきません。「抑うつ神経症」「慢性症うつ病」「神経症性抑うつ状態」も「背景に心の葛藤をもっている」という原因論があるために排除されてしまったわけです。

そのかわりに、「神経症的(性格的な問題の表れ)」だという原因論を排し、すべて、持続的に軽度の抑うつ状態が続くとする「気分変調症(dysthymia)」として記述されるようになりました。 「神経症」という概念から分離された「気分変調症」は、表面上に表れる症状や行動上の特徴だけを取り上げ、
DSM-IVでは以下のように表現されています。

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【気分変調症」の診断基準(DSM-IV-TR)】より抜粋

(1)食欲の不振または過食。

(2)不眠または過眠。

(3)気力・意欲に乏しく、疲労感の持続(倦怠感)。

(4)自分は価値がない、自信が持てない(自尊心の低下)。

(5)自己嫌悪感や罪悪感を伴う。

(6)集中力の低下。

(7)決断を下すのが困難。

(8)絶望感がある。


これらの症状のうち、少なくとも2つの症状を常に呈し、それがほぼ毎日続き、途中で普通の気分の期間があっても、2年以上症状が続く。
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やる気がしない、いつも疲れた感じ、気分が重い、楽しいことがない、不眠などのほか、無価値な自分、自己嫌悪や罪悪感などを感じている状態。

つまり大うつ病(major depression disorder)ほど重くはない抑うつ気分が、ずっと慢性的に続いている状態を指します。そして慢性に続いてはいますが、それをよく観察すると、対人関係などの葛藤やストレスに連動して、悪くなったり、少しよくなったりと、たいていは波がある状態で経過してゆくことがほとんどです。

 

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