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峠杣一日・著
「兇興変化(きょうきょうへんげ)!」
葈耳の怪人(をなもみのくわいじん)兇興大明神(きょうきょうだいみゃうじん)が、最期の力を振り絞(しぼ)る。
全身のちくちく針が蔓(つる)のやうにぐんぐん伸びると、ひとつの巨大な目ん玉、腐眼弾丸(くされめだま)を形作った。
「きょきょきょきょう!」
腐眼弾丸が、爆発的に膨脹(ばうちゃう)してゆく。
とどまることなく、何処迄もどこまでも脹(ふく)れ上がる。
ブラックホール空間が軋(きし)みはじめた。
歪(ゆが)みの生じた空間から剥(は)がれるやうに出て来た球体の何かが、次々と腐眼弾丸へと吸ひ込まれてゆく。
ああ、あれは睡れる魂(ねむれるたましひ)、宇宙の秩序(ちつじょ)の立役者(たてやくしゃ)たちの魂だ。
その無数の魂を喰(く)ひ散らかしながら、腐眼弾丸は拡脹(くわくちゃう)を続ける。
ブラックホールそのものを呑(の)み込み、世の理(よのことわり)に取って代はらむとしてゐるのだ。
その時、大笹霊瓊矛(おほさちのぬほこ)が二段変化(にだんへんげ)、大笹霊弓箭(おほさちのゆみや)へと姿を変へた。
弓の上端、末弭(うらはず)に立つお笹媛(おさき)。
弓を引き絞るその動きに連動する大笹霊弓箭。
いま、腐眼弾丸の洞(うつ)ろな中心部へ向けて射(い)られた鏑矢(かぶらや)。
鳴神(なるかみ・雷)のごとくに轟(とどろ)く大音響(だいおんきゃう)。
睡れる魂たちが、続々と夢(いめ・意芽)から醒める。
【よいこのみんなの合言葉を唱へよう♪】
〽️
いやさかえ
いのちいやちこ
さいはひよいち
まほらとこいは
みつのたま
南無あれかし大明神
南無あれかし大明神
南無あれかし大明神
つづく。