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峠杣一日・著
琅々(らうらう)と歌ひ上げる、お多福のお笹媛(おたふくのおさき)。
その言霊(ことだま)は、まうぽっぽ(迷妄汽車)を解体(かいたい)してゆく。
因果(いんぐわ・相対)に捉(とら)はれてゐた迷妄念々(めいまうねんねん)が、常(とは・永久)の命ひとつ(絶対・三子魂みつごだま)へと還(かへ)ってゆくのだ。
「きょ?!
これ皆の衆(みなのしゅう)、しっかりするのぢゃ!」
迷妄魂(めいまうだましひ)を鼓舞(こぶ)する兇興葈耳翁(きょうきょうをなもみをう)の声も虚(むな)しく、雪崩(なだれ)を打って瓦解(ぐわかい)するまうぽっぽ。
「あの土地はわしのもんなんぢゃ!」
「あの娘(こ)さへ居(ゐ)なければ!」
「奴(やつ)め!
殺してやっても飽(あ)き足らぬ!」
「全部、彼奴(きゃつ)の所為(せゐ)ぢゃ!」
「あたしは悪くないわ!」
「二度と人間になど生まれたくない!」
「何奴(どいつ)も此奴(こいつ)も!
天誅(てんちゅう)!」
などといった迷妄念々は、三子魂を見失ふことで起こる。
因果など、分かりやうもないのだ。
勝手な極(き)め付けは、利己念々(りこねんねん)でしかない。
ともかく、三子魂に還ることが肝要(かんえう)なのだ。
をろぽっぽ(大蛇汽車)に乗ってゐた兇興翁(きょうきょうをう)も、お笹媛の歌声に微睡(まどろ)みながら、その旅を終へた。
「おのれおのれ!
わいの可愛(かはゆ)い欠片(かけら)達が!」
空中分解したまうぽっぽの中から、すっかり枯(か)れ果てた葈耳(をなもみ)の怪人(くわいじん)が浮かび出た。
【よいこのみんなの合言葉を唱へよう♪】
〽️
いやさかえ
いのちいやちこ
さいはひよいち
まほらとこいは
みつのたま
南無あれかし大明神
南無あれかし大明神
南無あれかし大明神
つづく。