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峠杣一日・著
月影財船(つきかげのたからぶね)は約2万7000光年の彼方(かなた)へと、瞬(またた)く間(ま)に旅を終へた。
眼前には天の川銀河(あまのがはぎんが)の中心、ブラックホール。
や、あれは何だ。
ブラックホールの前に浮かぶ、二つの影。
鶴と亀だ。
やや、鶴が人の姿に変はる。
天狗猿(てんぐざる)の仮面を被(かぶ)る山伏(やまぶし)、猿田彦命(さるたひこのみこと)だ。
亀も、人の姿に変はる。
阿亀(おかめ・阿多福おたふく)の仮面を被る巫女(みこ)、天鈿女命(あまのうずめのみこと)だ。
彼らもまた常(とは・永久)の守部(もりべ)にして常の化身(けしん)、さいの神である。
天鈿女が笹(ささ)の葉の幣(ぬさ)をさらさらと揮(ふる)ふと、ブラックホールの目から噴水(ふんすい)の如(ごと)くにガスの噴流(ジェット)が迸(ほとばし)った。
そこへ猿田彦がほいと高下駄(たかげた)を放(はふ)ると、噴流の中に鉄道の軌条(レール)が現れた。
死人(しびと)の兇興翁(きょうきょうをう)、兇薬(きょうやく)達を乗せたをろぽっぽ御然らば號(大蛇汽車おほんしからばがう)を下ろした月影財船が遠ざかってゆく。
をろぽっぽは再び、ブラックホールの誘(いざな)ひに引き込まれるやうに走り出した。
そこは、私達の正体、私達の真実が、私達を待つ世界なのである。
【よいこのみんなの合言葉を唱へよう♪】
〽️
いやさかえ
いのちいやちこ
さいはひよいち
まほらとこいは
みつのたま
南無あれかし大明神
南無あれかし大明神
南無あれかし大明神
つづく。