(27)
峠杣一日・著
三つ子の魂が解体され、命そのものが消えてゆく兇興翁(きょうきょうをう)と兇薬(きょうやく)。
「兇興翁(わるおこしのぢいさん)、俺を呑(の)むのだ。
えい、梟鏡変化(けうきゃうへんげ)!」
兇薬が、最期の力を使って小さな丸薬(ぐわんやく)に変化した。
「どれ」
ごくりと呑み込んだ兇興翁だったが、そのままぐしゃりと崩壊(ほいくわい)、無数の腐眼弾丸(くされめだま)となって消滅(せうめつ)した。
「はて」
どうも腑(ふ)に落ちず訝(いぶか)しむ、女閻王(をんなえんわう)お光(おみつ)。
兇興翁と兇薬の姿は滅したものの、魂を写した写真の微(かす)かな燃え止(さ)しが灰(はひ)となって残り、舞ひ上がったやうな氣がしたからである。
さて、程(ほど)なくしてここは火神岳(ほのかみだけ)の金門(きんもん)。
その巨岩の門の先は滝になってをり、そこへ向かって清冽(せいれつ)な霊水(れいすい)が満天の星の瞬(またた)きに揺蕩(たゆた)ひながら流れてゐる。
その辺(ほとり)、賽の河原(さいのかはら)とも呼ばれるところへぱらぱらと降り集まる灰。
やがて二つのまとまりになると、小さな方は葈耳(をなもみ)の実、もう片方は梟(ふくろふ)の姿へと変(へん)じた。
兇薬師(わるくすし)としての奥の手を使った兇薬と、灰の姿を保(たも)ったま飛行し続けた兇興翁であった。
辛(から)くも死を免(まぬが)れた二人だったが、消耗(せうもう)著(いちじる)しく微動(びどう)だにしない。
【よいこのみんなの合言葉を唱へよう♪】
〽️
いやさかえ
いのちいやちこ
さいはひよいち
まほらとこいは
みつのたま
南無あれかし大明神
南無あれかし大明神
南無あれかし大明神
つづく。