①
峠杣一日・著
昇る朝日が、銀(しろがね)の雪原を染めてゆく
。
其(そ)の上空に、三つの火の玉が飛んで来た。
「やっほー♪」
火の玉の中の人影が、陽氣に黄色い声を上げる。
やあ、鬼火(おにび)、切火(きりび)、走火(はしりび)の乗り物だ。
鬼火のお鈴(おすず)、切火のお豊(おとよ)、走火のお愛(おかな)がそれぞれ操る炎が白銀(はくぎを)の斜面(しゃめん)を登ってゆく。
はて、三人が向かふ山の頂(いただき)にも人影が見える。
やあやあ、龍宮の乙姫(りゅうぐうのおとひめ)と燠火のお静(おきびのおしづ)である。
すると此処(ここ)は、地山(つちやま・石見国恐羅漢山いはみのくにおそらかんざん)なのだ。
と其処(そこ)へ、純白の天馬(てんば)がふはりと舞ひ降りた。
乗ってゐるのは手綱(たづな)を取る向姫(ひさひめ・竈火平霊太子へひへひたいしの娘・長門国向津具ながとのくにむかつく在住)と、其の背中に抱き付く姫の親友狐火のお千(きつねびのおゆき・石見国津和野つわの在住)だ。
山頂の巨岩(おほいは)に龍の眼のやうな紋様(もんやう)が浮き出ると、地山の地底にある龍宮への通路が開いた。
久々に集ひ、四方山話(よもやまばなし)に花を咲かせ乍(なが)ら門(かど)を潜る面々。
巨岩の紋様が消えると、一面に眩(まばゆ)いばかりの朝の氣吹(いぶき)が広がってゐた。
【よいこのみんなの合言葉を唱へよう♪】
いちよあれかし、さいはひよいち
まほらよいちそはか、南無あれかし大明神!
いのちいやちこ、いやさかえさいはひよいち。
つづく。