(40)
峠杣一日・著
伯耆国(はうきのくに)の火神岳(ほのかみだけ・大山だいせん)と出雲国(いづものくに)の佐比売山(さひめやま・三瓶山さんべさん)から、七色の光の柱が太く天高く立ち上(のぼ)ってゐるのが見える。
その光の正体は、火神岳に於(おい)ては空飛ぶ猪(ゐのしし)に跨(また)がった烏天狗(からすてんぐ)達、佐比売山に在(あ)っては雲に乗った弁財天女(べんざいてんにょ)の侍女(じぢょ)達。
それぞれ数へ切れないほどに飛び交(か)ひ、手に手に下げるぶら提灯(ちゃうちん)がその光源(くわうげん)である。
この光の螺旋(らせん)は、勾玉宝船(まがたまたからぶね)出航(しゅっかう)の合図(あひづ)なのだ。
島根嶋(しまねじま・島根半島しまねはんたう・勾玉嶋まがたまじま)からゆらり浮き上がるやうに、十七里(じふしちり・約67㎞)にも及ぶ巨大な弁才船(べざいせん)が姿を現(あらは)した。
そして宍道湖(しんぢこ)と中海(なかうみ)の水中からは、勾玉宝船を背負ふ大龍神(だいりゅうじん)が出現。
両者は、上昇しながら合体する。
宝船の下部(かぶ)から、大根島八手彦(だいこんじまやつでひこ)が操(あやつ)る八手(たこ)と江島千両姫(えしませんりゃうひめ)が操る百足(むかで)が分離。
龍神の背に列(つら)なる装甲部(さうかふぶ)が開くと、宝船の吃水線下(きっすいせんか)を格納(かくなふ)。
次(つ)いで龍神下腹(かふく)装甲部が開き、八手と百足が接続した。
「よし!
世一七福黄金宝船(よいちしちふくくがねのたからぶね)、出立(しゅったーつ)!」
声を轟(とどろ)かせる、八字髭(はちじひげ)の船頭(せんどう)。
彼の名は多芽眞(たがま)。
眞芽多磨自今多芽眞(まがたまじまたがま)だ。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20210925/20/cocochiyosa/e0/f2/j/o1080081015006470807.jpg?caw=800)
【よいこのみんなの合言葉を唱へよう♪】
いちよあれかし、さいはひよいち。
まほらよいちそはか、南無あれかし大明神!
つづく。