(41)
峠杣一日・著
地球を飛び立った、島根嶋勾玉宝船(しまねじままがたまたからぶね)。
月面の東屋(あづまや)から、月の女神お玲(おたま)達が手を振って見送ってゐる。
おっと、地球から一頭(いっとう)の龍(りゅう)が宝船目掛けて一直線に追って来たぞ。
大根島八手彦(だいこんじまやつでひこ)の八手(たこ)や江島千両姫(えしませんりゃうひめ)の百足(むかで)よりも小さく、まだ子供と思はれる。
帆柱(ほばしら)に巻き付くやうに、宝船に降り立つ龍。
はて、その胸に開いた扉(とびら)の中から一人の青年が出て来た。
久々登場、出雲国(いづものくに)は漆仁(しつに)の薬湯(くすりゆ)、山峡(やまかひ)の宿(やど)の坊(ぼっ)ちゃん、大蛇八郎(をろちはちらう)である。
八郎の母走火のお順(はしりびのおより)の養父(やうふ)が豆鼕翁(とうとうをう)なので、八郎は豆鼕翁の孫となる。
やや、龍の子がすうっと縮(ちぢ)まると大蛇八郎の掌(たなうら)にちょこんと収(をさ)まった。
やあ、瑤大蛇の児瑤大蛇の小蛇(たまをろちのこのたまをろちのころち)のころちゃんこと小蛇八郎(ころちはちらう)だ。
伯耆(はうき)、出雲、隠岐(おき)の三つの宝珠(ほうじゅ)を得(え)た事で、龍体(りゅうたい)に変化(へんげ)出来るやうになったのである。
「大小蛇八郎(をろころちはちらう)、参上(さんじゃう)!」
うん、すっかり仲好(なかよ)しらしい。
【よいこのみんなの合言葉を唱へよう♪】
いちよあれかし、さいはひよいち。
まほらよいちそはか、南無あれかし大明神!
つづく。