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峠杣一日・著
「ふほ、神が何故(なぜ)、人間に肩入れするのか?!
こんな依怙贔屓(えこひいき)、もう沢山(たくさん)ぞ!」
ほざく兇闇(きょうあん)の周(まは)りに、ころころと色取り取りの槌の子(つちのこ)が現れた。
躑躅色(つつじいろ)の鬼槌大明神(みのつちだいみゃうじん)お鬼(おみの)、
菖蒲色(あやめいろ)の篠槌大明神(しのつちだいみゃうじん)お篠(おしの)、
白妙(しろたへ)の門槌大明神(とのつちだいみゃうじん)お門(おゆき)、
褐色(かちいろ)の籠槌大明神(このつちだいみゃうじん)お籠(おこの)、
そして白金色(しろがねいろ)の湯槌大明神(ゆのつちだいみゃうじん)お湯(おゆの)である。
おっと、檍(あはぎ)の上空には島根半島(しまねはんたう)の化身(けしん)たる黄金宝船(くがねのたからぶね)が浮かんでゐる。
すうっと雲に乗って降下(かうか)して来たのは、何と出雲黄金大黒天(いづものわうごんだいこくてん)。
其(そ)の手に眩(まばゆ)い山吹色(やまぶきいろ)の打出の小槌(うちでのこづち)は、叶槌大明神(かのつちだいみゃうじん)お叶(おかな)である。
やあ、野の霊(ののち)野槌(のづち)だ瑤野槌(たまのづち)。
わあい、此処(ここ)に目出度(めでた)く集(つど)ふ八柱(やはしら)、瑤野槌八姉妹(たまのづちはちしまい)なり。
「ぐう、邪悪(じゃあーく)!
魂(だーましーい)!!」
邪悪兇闇(じゃあくきょうあん)、激切(げきせつ)の変化(へんげ)。
残ってゐた上半身(かみはんしん)が眼(め)!眼!眼!の渦(うづ)となって頭(かぶり)をがぶりと呑(の)み込むと、ごろり梟首(けうしゅ)だ晒し首(さらしくび)、梟(ふくろふ)の首へと変化した。
「ふほう!
然(さ)ーらばぞっ!!」
右廻(みぎまは)り、梟首ぐるぐる大廻転(だいくわいてん)、ぶんぶんと唸(うな)りをあげて舞ひ上がると、現世(げんせ)へと通ずる石門(せきもん)へ飛び込んだ。
「ふほほおう!
諦(あきら)めはせぬぞ!
全ての人間に天誅(てーんちゅーう)!!
ちゅーう…ちゅうう…ちゅっ…」
【よいこのみんなの合言葉を唱へよう♪】
いちよあれかし、さいはひよいち。
まほらよいちそはか、南無あれかし大明神!
つづく。