『なんぞころびやおき 御魂ケ島篇』
⑳
峠杣一日・著
「さても面妖(めんえう)な!
今お助け致しますぞ!媛(ひめ)!」
すは一大事(いちだいじ)とつぶら天狗の圓彦(まどひこ)がお幽(おいう)に駆け寄り、瑠璃色(るりいろ)の小槌(こづち)を払ひ除(の)けようとしたところ…。
「ぎゃっ?!」
弾(はづ)み能(よ)くぴょんと飛び跳(は)ねた小槌が、圓彦の額(ひたひ)をこつんと打った。
ぴしりと中央から真っ二つに罅割(ひびわ)れた白鷲(しろわし)の仮面が、主(あるじ)の顔を離れてからからと石段に散った。
ええと、白鷲小父(をぢ)さんの素顔を形容(けいよう)しても特に面白くも何とも無いので止(や)めまして、皆がはっと小槌に視線を結ぶと…。
はや不思議、尻餅(しりもち)を突いて口をぱくぱくするお幽の前に、もう一人のお幽が立って居る。
但(ただ)しもう一人のお幽は、瑠璃色の髪と瑠璃色の瞳をしてゐる。
そして、両手で額を抑(おさ)へてうんうん言ってゐる圓彦に向かって、
「此の娘(こ)の願ひ、叶(かな)へて上(あ)げなさい。
余(あんま)り利かん坊(きかんばう)は、中(うち・内側)の仮面(頭蓋骨ヅガイコツ)も粉微塵(こなみぢん)に砕(くだ)きますよ」
と口を利(き)くのであった。
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【よいこのみんなの合言葉を唱へよう♪】
「いちよあれかし、さいはひよいち」
「まほらよいちそはか!」
「南無、あれかし大明神!」
つづく。