『なんぞころびやおき 御魂ケ島篇』
⑲
峠杣一日・著
空色(そらいろ)の謎の生き物、楕円形(だゑんけい)の胴体に頭と尾(を)が生(は)えてをり、手足は見当たらない。
や、見る間(ま)に焼き餅(やきもち)が脹(ふく)らむ様にぷっくりと丸くなったかと思ふと、ころころとお幽(おいう)目掛けて転(ころ)がり始めた。
そしてついと跳(は)ねると、お幽の両手にちょこんと着地。
「きゃああああっ!」
思はず受け止めてしまったお幽ががくがくと震(ふる)へて卒倒(そったう)せんばかりに尻餅を突く、と其の勢ひにどんと突き飛ばされた蓮権現転何(はちすごんげんころびなんぞ)が雪山の斜面に転(ころ)げ落ちた。
「わああああっ!」
ごろごろと、丸々と成長する雪の玉となって遠ざかって行く蓮大権現(はちすだいごんげん)。
はて、上(のぼ)って来る時には気付かなかったが、転げ行く雪の玉の前方に仁王門(にわうもん)が見える。
ぽおんと跳ねた雪の権現玉、吸ひ寄せられる様に仁王門に呑(の)み込まれると、ふっと姿が掻(か)き消えてしまった。
呆然(ばうぜん)と佇立(ちょりつ)する一行(いっかう)、はっとお幽の掌(たなうら)に目を向けるとあら不思議、瑠璃色(るりいろ)美しい小槌(こづち)が乗ってゐた。
![190704_190943.jpg](https://stat.ameba.jp/user_images/20190704/19/cocochiyosa/82/99/j/t02200165_4128309614491639363.jpg?caw=800)
【よいこのみんなの合言葉を唱へよう♪】
「いちよあれかし、さいはひよいち」
「まほらよいちそはか!」
「南無、あれかし大明神!」
つゞく。