『なんぞころびやおき 御魂ケ島篇』
⑯
峠杣一日・著
「媛(ひめ)、御(おおん)御免(ごめん)!」
機関摩天楼(からくりまてんろう)純白の羽団扇(はうちは)からぬっと鉤爪(かぎづめ)の付いた腕が伸び出し、お幽(おいう)を捉(とら)へんとす。
羽団扇の起こす雪吹雪(ゆきふぶき)で身動きの出来ぬお幽(おいう)、観念(くわんねん)残念。
「こらーーっ!」
其の時、大空の彼方(かなた)から疳高(かんだか)く透(す)き徹(とほ)る声。
次の瞬間、声の空から現れた巨大な円盤(ゑんばん)が、羽団扇の腕を掠(かす)めて飛び抜けた。
…や、羽団扇の腕が、無い!
断面(だんめん)鮮(あざ)やか、すぱりと斬(き)り落とされた羽団扇の腕が、どぶんと円盤直下の海中に水柱(みづばしら)を立てる。
「うら若き少女(をとめ)を襲(おそ)ふ変態(へんたい)!
不届き千万(ふとどきせんばーん)!」
円周(ゑんしう)に刃(やいば)を具(そな)へた紅色(くれなゐいろ)の円盤、其の上部に仁王立(にわうだ)ちするは女の河童(かっぱ)。
やあ、伯耆国(はうきのくに)の女河童、尻子田魔凜(しりこだ まりん)だ。
![190306_193426.jpg](https://stat.ameba.jp/user_images/20190306/19/cocochiyosa/8b/b0/j/t02200165_4128309614367409593.jpg?caw=800)
よいこのみんなの合言葉を唱へよう♪
「いちよあれかし、さいはひよいち。
南無、あれかし大明神!」
つゞく。