『なんぞころびやおき 御魂ケ島篇』
⑮
峠杣一日・著
正体が現れたお幽(おいう)を前に、一同(いちどう)打ち揃(そろ)ひてぽかんと呆(ほう)けてゐると…。
「媛(ひめ)ーっ!」
上空からの声、やや、何時(いつ)の間(ま)にか、一同の頭上には純白の巨大な羽団扇(はうちは)が浮かんでゐる。
おお、あれは天山(あめやま)の白鷲天狗(しろわしてんぐ)が操(あやつ)る乗物、狗鷲(いぬわし)の鉤変化(かぎへんげ)で人の姿にもなる機関摩天楼(からくりまてんろう)だ!
ゆっくりと下降して来るに従って風圧(ふうあつ)が生じ、雪原の雪が捲(ま)き起こり乱れ舞ふ。
「御無事ですかっ!
媛ーっ!」
純白の羽団扇の上部に、狗鷲の仮面に山伏装束(やまぶししゃうぞく)の白鷲天狗が姿を現した。
「しつこいぞ圓(つぶら)っ!
私は心を決めたのだ!
帰らぬっ!」
お幽(おいう)と押問答(おしもんだふ)をするつぶら天狗こと圓彦(まどひこ)は、天山(あめやま)の白鷲天狗の頭目(とうもく)経法院(きゃうほふいん)に仕(つか)へる機関摩天楼の操縦士(さうじゅうし)であり、お幽を連れ帰る様に命じられてゐた。
因みに、若き女白鷲天狗(をんなしろわしてんぐ)のお幽は、経法院の娘である。
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【よいこのみんなの合言葉を唱へよう♪】
「いちよあれかし、さいはひよいち。
南無、あれかし大明神!」
つゞく。