『なんぞころびやおき 大極楽本尊郷篇』
(21)
峠杣一日・著
狂喜乱舞(きゃうきらんぶ)、止(とゞ)めの迷妄爆弾(めいまうばくだん)を発射せんとした迷妄宝船(めいまうたからぶね)だったが、びくり何かの氣配(けはい)を感じてぐっと身構へた。
さあ、此処で愈々(いよゝゝ)冥界(めいかい)の住人達が登場する。
天空から風を切って現れた幾多(いくた)の火矢(ひや)が迷妄宝船(めいまうたからぶね)の上部贋宝船(にせたからぶね)の船体を貫き通すと、船は忽(たちま)ち猛火(まうくわ)に包まれた。
火矢と見えたのは業火の烏天狗(ごふくわのからすてんぐ)の一団、手にゝゝ燃え立つ業火の錫杖(ごふくわのしゃくぢゃう)を持って宙に浮かんでゐる。
三途の川(さんづのかは)からは幾条(いくすぢ)もの水柱(みづばしら)が立ち、迷妄宝船(めいまうたからぶね)の下部迷ひの大蛇(まよひのをろち)の蛇体(じゃたい)に月虹の水(げっこうのみづ)を浴びせ掛け融解(ゆうかい)させて行く。
水面(みなも)に現れたのは三途の川子(さんづのかはこ・三途の河童)の一団、手にゝゝ月虹水鉄砲(げっこうみづでっぱう)を構へて迷妄宝船(めいまうたからぶね)をびゅんゝゝゝ狙ひ撃ちにしてゐるのだ。
上は大火(たいくわ)で下は大水(おほみづ)『引っ繰り返ったお風呂作戦』に嵌(は)まり、悶絶(もんぜつ)寸前(すんぜん)の迷妄宝船(めいまうたからぶね)。
起死回生(きしくわいせい)と、盲滅法(めくらめっぽふ)に迷妄爆弾(めいまうばくだん)を打っ放(ぶっぱな)し掛かるが、迷ひの大蛇(まよひのをろち)の大口を開いた瞬間、どかんと喉(のど)を塞(ふさ)ぐ岩が飛び込んで来た。
賽の河原(さいのかはら)の巌窟(がんくつ)から現れた賽塊の鬼(さいころのおに)の一団が、迷ひの大蛇(まよひのをろち)の八つの喉仏(のどぼとけ)を標的にして積み上げた岩を金棒(かなぼう)で撃ち出してゐるのだ。
恐ろしく鬼コントロールな賽塊打法(さいころだはふ)の打岩(だがん)は順行精神を宿す魔弾(まだん)となって、迷ひの大蛇(まよひのをろち)の八つの喉笛(のどぶえ)をぴいゝゝと鳴らす。
こりゃ堪(たま)らん、遂(つひ)に迷妄爆弾(めいまうばくだん)が内部で大爆発、迷妄宝船(めいまうたからぶね)は狂乱(きゃうらん)の叫びと共に三途の川(さんづのかは)に墜落(ついらく)、轟沈(がうちん)した。
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つゞく。