『なんぞころびやおき 大極楽本尊郷篇』
⑮
峠杣一日・著
迴門號(くわいもんがう)の体当たりで翻筋斗(もんどり)を打って、月虹大河(げっこうたいが)たる三途の川(さんづのかは)に墜落(ついらく)した迷妄宝船(めいまうたからぶね)。
浄土(じゃうど)の呼び水(よびみづ)に阿鼻叫喚(あびけうくわん)、しかし何と融解(ゆうかい)して行く体でのたうちまはりながらも迷妄噴流(めいまうジェット)全開で空中へ飛び上がると、其のまゝの勢(いきほ)ひで迴門號(くわいもんがう)に体当たり仕返した。
「仕舞(しま)うた、油断したっ!」
歯を食ひ縛って操舵輪(さうだりん)に齧(かじ)り付く胡蘆駒福兵衛(ころこまのふくべゑ)であったが、迴門號(くわいもんがう)は一直線に的(まと)を射(い)る様に骨肉小屋(こつにくごや)の物見櫓(ものみやぐら)に突き立った。
土煙(つちけぶり)を上げて崩落(ほうらく)する物見櫓(ものみやぐら)、骨肉小屋(こつにくごや)も木っ端微塵(こっぱみぢん)に吹き飛んで了(しま)った。
「ぎゃはゝゝゝっ!」
「ぷほーっはほゝゝゝっ!」
「様(ざま)ぁ虫螻(むしけら)っ!」
腹筋(はらすぢ)を縒(よ)る迷妄宝船(めいまうたからぶね)、滑(ぬめ)りと迷妄蘇生(めいまうそせい)の脱皮(だっぴ)を始めるのであった。
![190704_190943.jpg](https://stat.ameba.jp/user_images/20190704/19/cocochiyosa/82/99/j/t02200165_4128309614491639363.jpg?caw=800)
つゞく。