『なんぞころびやおき 大極楽本尊郷篇』
⑬
峠杣一日・著
迷ひの衣(まよひのころも)に憑依(ひょうい)して三途の川(さんづのかは)に侵入(しんにふ)して来た迷ひの大蛇(まよひのをろち)、鎌首(かまくび)を分裂(ぶんれつ)させながら完全な姿へと迷妄変化(めいまうへんげ)を続けてゐる。
しかし三途の川(さんづのかは)は月虹の水(げっこうのみづ)の大河(たいが)、迷ひの大蛇(まよひのをろち)の体は忽(たちま)ち祓(はら)ひ清(きよ)められ鎮(しづ)められて頽(くづほ)れる様に水面(みなも)に消え去って行く。
最早(もはや)自滅(じめつ)であらうかと思はれた時、更なるどす黒い迷ひの衣(まよひのころも)の群れが大浪(おほなみ)の如くに押し寄せ、迷ひの大蛇(まよひのをろち)に覆(おほ)ひ被(かぶ)さるのであった。
「苦(く)破(は)ゝゝゝ、迷妄合体(めいまうがったい)…」
三途の川(さんづのかは)に垂(た)れ籠(こ)める不穏(ふをん)な黒雲(くろくも)、其の中からゆっくりと姿を現したのは、迷ひの大蛇(まよひのをろち)と贋宝船(にせたからぶね)とが融合(ゆうがふ)した迷妄宝船(めいまうたからぶね)であった。
どす黒い迷ひの衣(まよひのころも)の群れには、迷ひの大蛇(まよひのをろち)のみならず贋宝船(にせたからぶね)も潜(ひそ)んでゐたのだ。
月虹大河(げっこうたいが)の三途の川(さんづのかは)に、勝ち誇った様に影を落とした迷妄宝船(めいまうたからぶね)が不氣味な薄笑(うすわら)ひと共に宙に浮かんでゐるのだった。
![190704_190943.jpg](https://stat.ameba.jp/user_images/20190704/19/cocochiyosa/82/99/j/t02200165_4128309614491639363.jpg?caw=800)
つゞく。