『なんぞころびやおき 大極楽本尊郷篇』
⑫
峠杣一日・著
暗闇色(くらやみいろ)の迷ひの衣(まよひのころも)の一団が、三途の川(さんづのかは)の水面(みなも)を游(およ)ぐかの様にどんぶりざぶゝゝと一点に集まって行く。
「むゝ、此れはいかんぞ」
骨肉眼鏡(こつにくがんきゃう)が骨肉小屋(こつにくごや)の物見櫓(ものみやぐら)から颯(さっ)と宙(ちう)に身を躍(をど)らせると、お錦(おかね)と骨肉童(こつにくわらべ)達もぴょんゝゝゝと飛び出して暗闇色の迷ひの衣(まよひのころも)目掛けて賽の河原(さいのかはら)を直走(ひたはし)る。
「苦(く)ゝゝ、迷妄変化(めいまうへんげ)…」
ひとつに絡(から)み合って行く暗闇色の迷ひの衣(まよひのころも)、見る間(ま)に物見櫓を見下ろす程に脹(ふく)れ上がると、ぬらり迷ひの大蛇(まよひのをろち)の姿が現れた。
まんまと迷ひの衣(まよひのころも)に取り憑(つ)き、三途の川(さんづのかは)を破壊せんと紛(まぎ)れ込んで来たのだ。
さても此奴(こいつ)は一大事(いちだいじ)。
三途の川(さんづのかは)は、骨肉一家(こつにくいっか)は、蓮権現転何(はちすごんげんころびなんぞ)達一行(いっかう)の運命や如何(いか)に。
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つゞく。