『なんぞころびやおき 女神御前篇』
(25)
峠杣一日・著
「あ、鬼燈曾祖母(ほゝづきばあ)ちゃんだ」
あれかし大明神の境内で螢火のお総(ほたるびのおふさ)のちゃんばらごっこで遊んでゐた子供達に手を引かれ、燈(あかり)が峠杣屋敷(たうげそまやしき)の居間に着くと、お総(おふさ)はごろり寝転んで肘枕(ひぢまくら)でテレビを見てゐた。
(♪~抹茶のCMが流れてをり、出演は姫山弁財天の侍女お市(おいち))
「今日も一服、此れで私も活き弁天(いきべんてん)。
銘茶(めいちゃ)、姫山天女(ひめやまてんにょ)」
(天上の琵琶の音色~♪)
「あらお母さん、いらっしゃい。
泊まって行くなら丁度いゝわ、夕飯が余るからどうしやうかと思ってたんだよね」
居間の団欒(だんらん)と、寝室からは幽(かす)かに一日翁(いちにちをう)、余一(よいち)、それに豆翁(とうをう)の呻(うめ)き声が聞こえる夕暮れであった。
![190822_173630.jpg](https://stat.ameba.jp/user_images/20190822/17/cocochiyosa/74/08/j/t02200165_4128309614547096634.jpg?caw=800)
つゞく。