『なんぞころびやおき 女神御前篇』
(24)
峠杣一日・著
少々時間を遡(さかのぼ)り、あれかし山(あれかしやま)。
「あらゝゝ、また派手にやってるわねえ」
峠杣屋敷(たうげそまやしき)の地下からもくゝゝと立ち上(のぼ)る土煙(つちけぶり)を楽しさうに噴き出し乍(なが)ら眺めて、風呂敷包みを抱へてやって来た媼(おうな)は無尽蔵燈(むじんざうあかり)、螢火のお総(ほたるびのおふさ)の母である。
燈(あかり)はあれかし山の麓(ふもと)にある常鏡寺(じゃうきゃうじ)は無尽蔵家(むじんざうけ)の跡取り娘であり、やがて婿(むこ)の恒徳(つねのり)を随(したが)へて切り盛りし、今は息子で螢火のお総(ほたるびのおふさ)の兄の渡(わたる)に住職を引き継いでゐた。
鬼燈(ほゝづき)さんと皆から道号(だうがう)で呼ばれてゐる燈(あかり)、一日翁(いちにちをう)とは中学校の同級生であった。
![190530_191326.jpg](https://stat.ameba.jp/user_images/20190530/19/cocochiyosa/15/84/j/t02200165_4128309614419066284.jpg?caw=800)
つゞく。