『なんぞころびやおき 女神御前篇』
(22)
峠杣一日・著
さて、そんな七福神の聖母(せいぼ)とも呼ぶべき弁財天の住まふ姫山弁天御殿(ひめやまべんてんごてん)。
「まあ、黄粉(きなこ)ちゃん、万年青(おもと)ちゃんお久し振り」
「きゃあ、二人とも綺麗になったわね」
近江國(あふみのくに)の弁財天と侍女(じぢょ)のお島(おしま)が話し掛けてゐるのは、姫山弁財天(ひめやまべんざいてん)の姪っ子双子姉妹(めひっこふたごしまい)、数へで廿二歳(22歳)になる黄粉(きなこ)と万年青(おもと)である。
石見銀山(いはみぎんざん)に陶芸家(たうげいか)として暮らす姫山弁財天の妹おさめの娘達であり、おさめの助手として付いて来てゐた。
そしておさめと黄粉(きなこ)万年青(おもと)の三人が作り上げたのは、瑤大蛇(たまをろち)の児瑤大蛇(このたまをろち)の小蛇(ころち)のころちゃんを象(かたど)った素焼き(すやき)の産霊緒の壺(むすびをのつぼ)であった。
いざ、姫山(ひめやま)の頂(いたゞき)(男三瓶山頂)に産霊緒の壺(むすびをのつぼ)を供へて、一同打ち揃っての祭事(さいじ)が始まった。
![190530_191326.jpg](https://stat.ameba.jp/user_images/20190530/19/cocochiyosa/15/84/j/t02200165_4128309614419066284.jpg?caw=800)
つゞく。