『なんぞころびやおき』(58) | 『さいはひよいち』日本古来の人生観 常の理三つ子の魂 島根半島は勾玉宝船 山陰(島根鳥取)はたまをろち瑤大蛇 あれかし山の峠杣一日・著

『さいはひよいち』日本古来の人生観 常の理三つ子の魂 島根半島は勾玉宝船 山陰(島根鳥取)はたまをろち瑤大蛇 あれかし山の峠杣一日・著

島根県松江市東出雲町、あれかし山の峠杣一日です。
島根半島(島根島)は勾玉宝船、山陰(東方鳥取瑠璃光藥師少彦名神、西方島根極樂阿弥陀大国主神)は瑤大蛇(たまをろち)。常の理(とはのことわり)あれかし大明神鎮まる意宇の古都から常の親子(085)の物語を書いてゐます。


『なんぞころびやおき』

(58)

峠杣一日・著

毛助(けすけ)の身の上に何があったのやら定かではないが、今や迷ひの大蛇(まよひのをろち)に呑(の)まれむとしてゐる。

私達の常の命(とはのいのち)は順行して常の理(とはのことわり)を現すがしかし、逆行して迷ひの大蛇(まよひのをろち)を生み出すのもまた常の命(とはのいのち)なのである。

此の命を如何(どう)生かすかは、私達一人ひとりの心馳(こゝろば)せに掛かってゐるのだ。

時折(ときをり)、毛助(けすけ)の体がどたんと宙に跳ね上がっては落ちる。

全身を被(おほ)ふ黒光る体毛が、忽(たちま)ち血染めに喘(あへ)ぐ。

迷ひの大蛇(まよひのをろち)などに呑まれてなるものかと、決死の氣力を振り絞ってゐるのだ。

はて何時(いつ)の間(ま)にやら、毛助(けすけ)を取り囲む木々の上には異変を察知した烏天狗(からすてんぐ)の一団が音も風も無く集まってゐるではないか。

事の成り行きにじっと目を光らせ、手に手に錫杖(しゃくぢゃう)を構へてゐる。

190523_180745.jpg

つゞく。