『なんぞころびやおき』
(33)
峠杣一日・著
月虹豆鉄砲(げっこうまめでっぱう)の弾丸が贋宝船(にせたからぶね)に炸裂(さくれつ)すると、超掘鑿ドリル爆弾(てうくっさくどりるばくだん)は雲散霧消(うんさんむせう)。
次いで巨大な空目玉(そらめだま)に一瞬だけ澄(す)んだ眼(め)の光が点(とも)ると、歓喜(くわんき)と悔恨(くわいこん)の入(い)り交じった叫びを泪(なみだ)と共に発して、大空に花火の如く砕(くだ)け散った。
月虹の水(げっこうのみづ)は、生命の順行を潤(うるほ)す。
迷ひの大蛇(まよひのをろち)が消滅する瞬間、彼等は順行の正氣(しゃうき)に返り、いとも懐かしい常の故郷(とはのふるさと)を見たのであった。
其の滂沱(ばうだ)は一時(ひとゝき)、車軸(しゃぢく)を流す雨となり、やがて、虹が立った。
つゞく。