『なんぞころびやおき』
(29)
峠杣一日・著
「蓮(はちす)の旦那(だんな)、お鈴(すゞ)。
贋宝船(にせたからぶね)の軌道(きだう)を計算して見たんだが、奴の目標は此処ぢゃあない。
神山(かみやま)だ、神山(かみやま)の麓(ふもと)へ向かってゐるんだ」
「なんだって。
あんた、其れってまさか」
「余一(よいち)よ、まことか」
余一(よいち)の言葉に、目を丸くするお鈴と立ち尽くす蓮権現転何(はちすごんげんころびなんぞ)。
さあ、此れは大変な事になった。
見よ、贋宝船(にせたからぶね)を乗せた張りぼての龍神が破れて散ると、其の下から巨大な掘鑿(くっさく)ドリルが現れた。
贋宝船(にせたからぶね)は、神山(かみやま)の地下一万メートルに潜って自爆(じばく)するつもりに違ひない。
さうなっては、日本列島は沈没してしまふに違ひないのだ。
最早(もはや)、危(あや)ふし!地球!
【大吉】(だいきち)
隠岐国は知夫里の里に住まふ、切火のお晴の祖父。
つゞく。