あれかし大明神
~扨抑物語 第二幕 101
峠杣一日・著
百一、
おかめのお桂(かつ)が、満面に笑みを湛(たゝ)へる。
ひょっとこの岐蔵(みちざう)かにんまりと応へると、お桂(かつ)が白鷺(しらさぎ)の舞を奏(かな)で始めた。
其れは、常の命(とはのいのち)の喜びを現す天宇受売(あまのうずめ)(天:精神)(宇:家のはじめ)(受売:うけつぐ)の姿でもあった。
岐蔵(みちざう)が両手で天に掲(かゝ)げて居るのは、出来上がった許(ばか)りの日本刀(にっぽんたう)。
其の名も、安麻能我波(あまのがは)。
地鉄(ぢかね)には鬼の神宝(しんぽう)の金棒と隠岐(おき)の黒曜石(こくえうせき)が用(もち)ゐられ、刀身(たうしん)の煌(きら)めきは天の川其の物であった。
此度の鎮魂(たましづめ)を、後世に伝へる一振(ひとふ)りである。
此処は、出雲国(いづものくに)比田(ひだ)の里であった。
つゞく