~扨抑物語 第二幕 100
峠杣一日・著
百、
当たり前の世の中にしよう。
端的(たんてき)に言って、生きて居る事は一(いち)なので、一(いち)がないと辛く、つまらないのである。
![180709_175417.jpg](https://stat.ameba.jp/user_images/20180709/17/cocochiyosa/d1/32/j/t02200165_4128309614226092480.jpg?caw=800)
縦(たて)の環(わ)は種(たね)と稔(みのり)で、常(とは)。
横の環は助け合いで、今(いま)。
其の真ん中に常の今(とはのいま)、中今(なかいま)がある。
人には、余力が肝心要(かんじんかなめ)。
親の働きを現して行く事にこそ、甲斐(かひ)があらう。
等と金言(きんげん)を交はしつゝ、二人の老翁(らうをう)。
茅葺(かやぶ)きの庵(いほり)に、差しつ差されつ烏鷺(うろ)の手合はせ。
音蔵(おんざう)と言蔵(ごんざう)は幼馴染(をさなゝじ)みである。
庵の空には、黄金(わうごん)の天の川が横たはって居る。
「見事な輝きぢゃなう。
豆仙人(まめせんにん)達は上手くやった様ぢゃ」
言蔵(ごんざう)が言ふと、水鏡の向かふの音蔵(おんざう)が頷(うなづ)く。
何と、黄金の天の川と見えたのは無数に舞ひ降りて水田(みづた)に浮かぶ、黄葉(くわうえふ)した銀杏(いちゃう)の葉であった。
其の水面の中に、庵と銀杏の大木がしいんと映って居た…此れ、金言銀杏(きんげんいちゃう)なり。
此処は、出雲国(いづものくに)馬木(まき)の里である。
つゞく