あれかし大明神
~扨抑物語 第二幕 98
峠杣一日・著
九十八、
原因は、親の働きの不作(ふさく)であった。
人が常の理(とはのことわり)を見失ふと、天の川の鏡が曇り、導(しるべ)の灯火が消えて、贋宝船(にせたからぶね)や大蛇(だいじゃ)等が迷ひ出るのだ。
(復習)
親⇔子
稔⇔種
国⇔家
例へば、金を得る方法は親の働きをする事である。
親の働きは、自他に恵みを育む稔りである。
何かに縋(すが)るだけでは(縁起物持つだけ、念仏するだけ…)、親の働きではないので、金にはなるまい。
金が存在しない世を考へて見れば、解(わか)りが早い。
稔る事と助け合ふ事とが、生きる事である。
「此度(こたび)は、先人(せんじん)達の真心の備蓄で救はれた」
と、一つ目法師(ひとつめほふし)。
此(こ)れから先の天の川の輝きは、今を生きる一人ひとりの肩に掛かって居るのだ。
つゞく