あれかし大明神
~扨抑物語 第二幕
峠杣一日・著
四十二、(42/118)
『此の時期は幽霊船が多いが、それにしても些(ち)と多過ぎぢゃ。
天狗達も忙しいの』
『うむ。
迷ひに振り回される者が増えて居(を)る。
理(ことわり)を知りもせんでは、ころっと参って了(しま)ふぞ。
此の頃は、社(やしろ)に来る者でさへ、さうなのだ』
『斎角(ゆづぬ)殿、うちもぢゃ。
至(いた)って真剣に逆行を願ふもんぢゃから、滑稽(こっけい)を通り越して、もう気の毒での』
『どうにも、何をどうして良いのやらで、右往左往(うわうさわう)して居(を)る』
『ぢゃといふて、説教したとて上(うは)の空(そら)ぢゃしの』
然(しか)り。
理(ことわり)に目覚める切っ掛けは、ふと訪れる。
常の理(とはのことわり)自体は、文字通り常(つね)にあり続けてゐる。
其れを掴(つか)むのは、自(みづか)らの心の順行が、理(ことわり)と一つに重なった瞬間である。
(※此処でひとまづ終了します。お読みいたゞきありがたうございました。あしからず。)