秋晴れ。最近、仏壇のお花が菊ばかりになってしまった。たまには他のをと
思うけれど、花の値段が上がっていてすぐに1000円を超えてしまうから
結局無難な菊になる。今日は予定0だったが秋晴れなのでカットの予約を入れた。アントニオ猪木さんは苦手な人だったけど、あんなに元気だった人が..と思うと寂しい。ソフトバンクの優勝が目の前でそれが楽しみなのだけれど..。

木犀や空き家の庭か匂いくる
◉連続小説「代わり筆・上」20
「住み込んでくれるものならと、この突き当たりの日当りのよい部屋を用意しておりましたのに」
さよの鬢の幾筋かの白いものが暖かな陽射しを浴びてきらりと光る。
「ありがたいことでございます。ですが、住み慣れたお店とは離れがたいものがございまして」
「よろしいのですよ。仕事にも、これもおいおいと慣れていってくだされば」
「私に勤まりますでしょうか」
「あなたは才気溢れるお方とこの界隈では知らぬ者はないほどのお方、吉乃さんならば、と私が見込んだのです。ですが人の命を救う仕事です。心を引き締めて掛からねばなりません」
「何もかもが知らぬことばかり、よろしくお指導賜りたく存じます」
頭を下げる吉乃にさよも大きく頷いた。
「息子の湊もようよう修業を終えて戻ってきたところです、やっと若い者に託せる時期がやって参ったと先生とも話しているのです。だからこそ、吉乃さんにも一刻も早く仕事を覚えていただきたいと思っているのですよ」
順庵のもとに来る患者は引きも切らない。仕事は目が廻る忙しさで、吉乃はまずは下働きのおくめさんに習って、病人や怪我人の浴衣や怪我の治療で汚れた巻き木綿や晒を洗濯したり畳んだり、賄い飯を病人の元に運んだりと休む暇はない。病人たちの誰もが労りを求めている。こんな自分でも必要とされているのだ。父亡き後、何とて生きる道も見いだせずにいた吉乃にようやく生気が戻ってきた。
「よいか、人は自分の身分や境遇などは選ぶことも出来ずこの世に産まれてくる。生れ落ちた場所に違いはあれど、人は皆、人として同じなのだ。だから人はみな相見たがえ、貧乏人も金持ちも分け隔てなく全て平等なのだ」
父の言葉はいつも吉乃の体に深く根付いていた。吉乃は父に死なれた寂しさを思う暇もなく働き、気がつけば十九歳を迎えていた。