だいたい疲れは3日後くらいに出る。昨夜は腰から下が別人のようになってたが
今日はなんとか復活。足にぴったりとフィットしたパンツばかり履いてたが
膝の怪我で締め付けるので痛くて履けない。最近はもんぺルックだ。楽。

水滴の葉先に光る秋日和
◉連載小説「代わり筆・上」18
これから先の目途は全く立たなかった。
春に入ったとはいえ風は冷たく、ときおりちらちらと思い出したように白いものが舞い降りてくる。堀端を歩く吉乃の藍木綿の袷は芯から冷えていた。
この世にたった一人取り残され心は虚ろのまま、ただ長屋の方へと足はむかっていた。
「吉乃ちゃん、寒かったろう」
とぼとぼと歩く吉乃の耳に聞き慣れた声が飛び込んできた。
「今日はうちでおまんま食べよ、みんな待ってるからさ、早く早く」
おみつだった。堪えていた涙が一度に溢れて来た。
「うちに手伝いにきてはくれまいか」
父、淳之介の死から一と月も経った頃、鬱鬱と涙ばかりが溢れる吉乃のもとに、順庵先生からの直々の話であった。何でもさよ様が吉乃を見込んでの、たっての願いということである。父の亡き後、寺子屋の収入も経たれて途方にくれる吉乃にとっては願ってもない話であった。本来ならば住み込み、と言われたが父と暮らしたきよみ長屋を出る決心はつかなかった。陰ひなたなく気にかけてくれる大家の矢兵衛さんをはじめ、今では心から気を許せるおみつの存在があった。悲しみに暮れていてもお天道様が上がれば、お店には賑やかな声が行き交う。おせいの子どものよね助と亀吉は年子で何かといえば掴み合いの喧嘩をしてはおっ母さんのおせいから叱られている。相店の鋳掛け屋文三のところでは、この春産まれた赤児の泣き声が吉乃のともすれば沈む胸に生きることを教えてくれるのだ。
「吉乃ちゃん、いい話じゃないか、順庵先生はそんじょそこらの薮とは違って町医者といっても小石川養生所にも負けないと聞いてるよ。住み込めるならば店代だってただだし、おまんまの食いっ逸れも無いってもんだよ、そうしなよ」
おみつはそう言うが決心が着かなかった。店賃が二か月も溜まっているが、矢兵衛とて吉乃が店(たな)から出て行くことは残念でならないのだ。
「店賃は三つ月までは待ってやれるがそれ以上は駄目だよ。吉乃ちゃんのことだ、大丈夫とわかってるが一応の決まりだからね。なに心配はないとみてるがね」
おせいが耳を近づけてきた。
「あんなこと言ってるけどさ、由蔵なんて半年も店賃溜めてるんだ。なあに、心配要らないよ」
父親に死なれ、今となれば長屋のみんなが家族のように思えているのだった。