お彼岸参りに出かけた友人を途中で待ち伏せてお茶をする予定。とにかく今日
も秋晴れなのだ。少しでも体を動かしたいという私。今日は書き物を持って
途中のお茶スポットまで。暑かった日々が嘘のように涼しい。

戒名を胸に刻みて彼岸参り
◉連載小説「代わり筆・上」10
「まぁ、いろいろと事情があったのさ」
「きよみ長屋という名前にはそんないきさつがあったのですね。この長屋のみなさんの心が一つになれたのは亡くなった大家さんのおかみさんのおかげでもあるのですね」
「さすが吉乃ちゃん、いいこと言うじゃないかね。その通りなのさ」
昔を思い出したのか、おせいがクスンと鼻をならした。
「今日もお父っあんの仕事の手助けかい」
「はい、手助けというほどのものではありません。ですが父が教えている間の子どもたちへの目配りも必要ですから少しは助けになるかと思いまして」
「何言ってんの、吉乃ちゃんのことを子どもたちが、女先生って一目も二目も置いてるんだよ。吉乃ちゃんはもう立派なものさ」
「子どもらのこと頼んだよ」
おせいの上の子亀吉は八歳で寺子屋に行き始めたばかりだった。