さて、今日は朝からリハビリ教室。昨日歯医者にタクシーでいったものの
帰りは冒険してバスに乗ったら満員。優先席の前に杖で立ってたけれど、座っている若い人は席を譲ってくれなかったなぁ。でもゆっくり博多駅構内を歩き少し買い物もして歩いて帰宅。時間は通常の3倍は掛かったけれど、達成感アリ〜。
やりきった感が残りました。少しずつ体が戻りつつある気がする。

クロッカス冴ゆる朝水やりぬ
◉連続小説「代わり筆。上」9
一番奥の相店(あいだな)には料亭勤めをしている、ともよさんという三十女が一人で住んでいるが夜遅くまでの仕事なので朝はほとんど顔を見せない。井戸の廻りを子どもたちがきゃぁきゃぁと嬌声を上げて走り回っているがさぞ煩いだろうに文句も言わないが起きてもこないのだ。
おみつの子は三人で上のまさよの背中にいるのが産まれて半年のくみで長男の吉助はまだ六歳、おせいの子よね助と同い年で、三尺帯の腰に木切れを差して岡っ引きと盗人遊びに余念がない。
「こどもは長屋の宝だからね、みんなで面倒見合うのが筋ってものさ」
誰ともなくそんな言葉が体に滲みていた。
「このお店(たな)はどうしてきよみ長屋という名前なのですか」
井戸端で手を動かしながら吉乃は訊いてみた。越して間もないころは何とも思わなかったが、時が経つに連れ、長屋についたきよみという名前を不思議に思うようになったのだった。
いつも賑やかなおみつが洗濯の手を止め神妙な顔をする。
「きよみってのはね、大家の矢兵衛さんの死んだおかみさんの名前なんだよ」
吉乃ははっとして口を硬く閉じた。おせいが横から口を挿んだ。
「もう五年もなるかねぇ、そりゃぁ寒い年の暮れにさ、流行り風邪をこじらせちまってぽっくり」
「そうなんだよ。それまで、ここは、矢兵衛長屋って名前だったのさ。大家のおかみさんはそりゃぁよくできた人でね、気配りの人だったよ。長屋のみんなが、おかみさんのおかげがどれほどのものか死なれて初めて身に滲みたのさ」
「この長屋はおかみさんで保っていたようなもんだ、なんてね。みんなしみじみ分ったのよ。そのあと、誰からともなく、きよみ長屋とみんなが呼ぶようになったんだよ」
肩に手拭を掛けて欠伸しいしい出てきた、相店(あいだな)で独り者の由蔵(よしぞう)も会話の端をとるように言葉を繋いだ。
「俺なんざ、どれほどおかみさんに助けられたか、おっ母ぁが喘息で何度か死にかけたときも、粥を炊いてくれたり寒さが体に悪いと綿入れの袷半纏を作ってくれたりさぁ、いけねぇ、朝から涙が出てくりゃぁ」
涙を見せまいと慌ててぶるっと顔を洗った。
「それで合点がいきました」