新しいこと | ryo's happy days

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思い切り人生を楽しむこと。これが全ての私。

いろんな雑用をこなして、それまで我慢していた画材を取り出した。ずっとやりたかった色鉛筆画。準備万端整っている。今夜からまずは指ならしを〜と張り切っている。さて、早朝は公園ウオーキング5600歩そして昼寝。今日は割と涼しい。このまま秋になってくれないかなぁ。

 掌にあまる桃剥きかぶりつく
連載小説「みつさんお手をどうぞ」33
 夜更けまで書いていた。開け放した窓から忍び込む夜気の湿りに気付いて外を見ると、いつの間に降り出したのか狭い路地を照らす外灯がこぬか雨にけぶっている。駐車場のトタン屋根がペンキ塗り立てのように濡れて光っていた。…雨かぁ…。あぐらをかいたままごろりと仰向けに転がった。木元さんとの会話が頭をよぎった。…みつさんの顔に苦労の影はありませんよ…。木元さんと些細なトラブルがあってからというもの、俺は木元さんの気持ちをなるべく浮上させる言葉を選んでいうことにしている。だが、この言葉は嘘じゃない。みつさんは惚けてはいる。それは確かに惚けてはいるけど、ときおり、見せる活き活きとした表情は、充実していた現役時代を偲ばせる。
 それにひきかえ、おれのおふくろといえば、クリーニング屋のパートで、いつ見ても化粧っ気のない疲れた顔をしていたっけ。高校時代、急用があって一度だけ、おふくろの職場を覗いたことがある。清潔そうな明るい店には無愛想な受付の女が眠そうな顔をして座っていた。俺がおふくろに会いたいと言うと、名前を訊いてから、裏、と言った。俺がぽかんとしてるとカウンターから出て来てガラス戸の外に立って人差し指を鈎型に曲げて指差し、また、裏、と言ったのでやっと解った。女の鈎型に曲げた指の方の路地を入ると、小さなクリーニング工場があり、従業員専用と書いたサッシの入り口が見えた。ノックをしても返事がないのでそっと開けると、もうもうと立ち込める蒸気の中で数名の人影が見えた。おふくろはというと、右端の機械を使ってズボンのプレスをしていた。室内は酷く暑かった。俺はおふくろの化粧がいつも剥げているのはこのせいだったのかとそのとき知った。おふくろはみつさんのような生き甲斐を持った仕事をしていたわけではない。ただ、俺を食わせるために学費を稼ぐことのために懸命に身を砕いて仕事をしてきたのだ。白い天井にかあちゃんの幸せそうな顔を描こうとしても、どうしても思い出せなかった。辛い顔はなんぼもでてくるのに…。