お盆 | ryo's happy days

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思い切り人生を楽しむこと。これが全ての私。

豪雨の晴れ間を縫って息子にお墓まいりに行ってもらった。お盆は歳を重ねるごとになにやらもの寂しくなってくる。自分が近くなっているせいだろうか。
お迎え団子を作ってご先祖様をお迎えした。
 盆の灯の語りかくよに揺らめきぬ
連載小説「みつさんお手をどうぞ」27
 正直、こんなふうに言われて嬉しかった。
「そう言っていただけたら俺もやりがいがあります」
「俺はすっかり忘れとったが、そういえば、自分の編んだ靴下が一番、履き心地がいいと言うて、今でもちびた靴下を手放さんなぁ」
「そのみつさんが履いている靴下がヒントになったんですよね。どう見ても手編みだったんで」
 
「おふくろ、この靴下はどうしたと?」
「はぁ、これな」
 みつさんは、膝を曲げて、節くれだった指で毛糸の靴下を引っぱり脱いだ。
「脱がんでもよかよ、クーラーで足が冷えるとやろ」
 俺はベッドの脇に座ってみつさんの手から靴下を受取り、骨の浮き出た細い足を抱え込んで履かせてやりながら、ばあちゃんのことを思い出していた。俺のばあちゃんも日がな一日、自分で編んだ靴下を履いていた。…ケン、頭寒足熱言うてな、頭は冷やさんといい知恵も浮かばんが、足はその反対たい。いっつも温めとかんと万病のもとやけんね…。死んだばあちゃんの口癖だった。俺がばあちゃんを思い出すとき、ばあちゃんは決まって毛糸をたぐりよせて靴下を編んでいる姿だったのだ。偶然思い出したばあちゃんのことが、たまたまみつさんにジャストミートしただけの話だが、俺のひらめきがヒットしたことに、正直、やった! と思ったことは確かだ。