早めの更新 | ryo's happy days

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思い切り人生を楽しむこと。これが全ての私。

今日はワクチン接種日でなにやら落ち着かない。治験も完璧ではないワクチン..。でも、ここまできたのだ。やろう!と決めて今日は早めの更新。
 梅雨空もあけてワクチンいざ行かん
連載小説「夏の残り19」
 ときがめまぐるしい早さで逆行していた。
 そうだったのか…。何もかもがパズル合わせのように明確にはまってきた。
 今思えば何かしら、寛太の様子がおかしくなったのも、昨年の丁度今日のように秋風が少し吹き始めたあの頃からだった。
 今日で盆の休みが終わるという日、食材の買い物に出かけたはずの寛太が手ぶらで帰って来たあのときだ。
 帰るなり「おかえり」と言うセツ子には見向きもせず、いきなり台所の蛇口をひねって五分刈りの頭を差し込んだ。勢いよく跳ねた水が寛太の首筋からTシャツの背中に入り肩口から肘を伝う。流れるままにまかせる水のヴェールの中に顔を隠して泣いているようにも見えた。いつもと違う気配を感じて、あっけに取られて見ていたが、頃合いをみて声をかけた。
「一体、どうしたん」
 セツ子の言葉に応えず、濡れたTシャツを脱ぐと頭と顔を拭いた。上半身裸のまま、やおら冷蔵庫から夏大根を取り出し、菜切り包丁で黙々と桂剥きを始めたのを見て、セツ子も問いかけることを止めた。寛太が包丁を握ると自分の世界にはまりこむことを知っていたからだ。