晴天だ。近くの公園ではちびっこのサッカー競技があっている。緊急事態宣言の中、開催する方も大変なことだろう。昨日も今日も近くを3000歩のウオーキング。そして今日も家篭りだ。明日はワクチン1回目の接種なのでとても自重している。

梅雨晴れや子らの嬌声風に乗り
◉連載小説「夏の残り18」
追いかける女の声に被さって聞こえたのは、忘れもしない寛太の声だった。あっと言う間もない瞬間の出来事だった。自転車の軋むブレーキ音を残してセツ子のすぐ横を走り去るとき、嗅ぎなれた汗に混じる魚の臭いがした。
せりあがる嫉妬を隠す恥じらいも忘れて、思わず女を見た。
西陽を避けようともせずに佇む女の顔は柔らかな微笑みが幸せな日常を滲ませている。しかし次の瞬間、セツ子は息を飲んだ。強い電流の柱が身体を突き抜けるような衝撃だった。女の半袖のブラウスから出ているはずの腕がなかった。女はまだ若く長い髪を一つに纏めたその首が異様に細く感じられるのは肩から伸びるはずの有るべき物がないからだと分かった。
くるりと後ろを向いてアパートに帰る女のブラウスの肩先が、頼りなくひらりと揺れるのが見えた。
一挙に空気が流れ出して釘づけの足のかせが解けたようにセツ子もそのままもと来た道を引き返す。虚脱した全身から寛太へ向けた憤りが砕けてはがれて落ちて行くようだ。