友人が送ってくれた「長崎の新じゃが」で今日はコロッケをつくった。ほこほこで美味!つい4個も食べてしまった。

新じゃがに思わず箸の進みたり
◉連載小説「夏の残り10」
寛太はほとんど口を利かない子だった。人見知りも激しく先輩から頭ごなしに叱られたりするとブスっとした顔で下を向いたまま謝りもしないので横柄な子だと思われていたようだが、それは生まれついての吃音症のせいだと段々分かってきた。
へまをして先輩から「謝れ」と言われ、すみません、が出てこずに「すうううっ、み、み、」と何度も言ううちに顔が真っ赤になり、前垂れを床に叩き付けて外に飛び出してしまった。セツ子には寛太の屈辱が痛いほどにわかった。というのはセツ子も言葉が遅く小学校に入った頃、厳しい先生に言葉をせかされてからというもの、一時期、ひどい吃音症になったことがあるのだ。喋ることが死ぬほど恥ずかしかった。あのとき、大好きな姉がセツ子をかばい、もどかしいセツ子の話をせかすことなく気長に聞いてくれなければ、セツ子の吃音症は治らなかったと今もそう思う。
寛太の苦しみを思うほど、セツ子は段々と寛太がまるで弟のように愛しくなっていた。何くれと世話をやくうち頑な寛太の心の氷が溶けて、セツ子が三十も半ばを過ぎる頃にはセツ子を、何かつけ、あねさん、あねさんと慕ってついてまわるようになっていたのだが、その頃になるとひどい吃音がいつの間にか治っていた。そうこうするうちに、母も亡くなり今は独り住まいのセツ子の古ぼけた一軒家に越してきたのだ。