任天堂Switch版エルネア王国をもとに書いています。
今回は本編補足編となります。
攻略情報は皆無です。
妄想回となりますので苦手な方はご遠慮下さい。
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山岳兵団ミラー家跡継ぎチレーナと
ヴェルンヘルとリンゴの娘スピカのお話です。
この2人はお互い好きあっていますが
山岳長子と、王女は基本的に結婚は出来ないため一緒にはなれないのです
これはそんな2人のあの頃のお話。
今から3年前222年頃のことです。
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「スピカちゃんは俺が守るよ!」
幼い少年のその言葉にどれだけ救われ、
どけだけ今後の心の支えになったか。
山岳長子と王女は結婚できない
1度は触れ合いお互いの気持ちを確かめて合ったけど……
私に触れるチレーナ君が辛そうにしているのを感じて、終わりにしないといけないと思った。
それだけじゃない。
チレーナ君のあの優しい眼差しが、他の女の子に向けられる日がくる……そんな日がくるまでこの関係を続けるなんて自分には耐えられなかったから
私はアモス君の告白を受けることにした。
アモス君は私がチレーナ君を好きなことを分かったうえで告白してきた。
こんな私でも受け入れてくれるなんてアモス君も物好きだ。
私がアモス君と付き合うことになったその日の夜
チレーナ君は酒場で泥酔したと聞いた。
「よっぽどスピカちゃんに惚れてたんだろうねぇ。まあ、気にしなくていいよ。これが最善なんだろうからさ……」
山岳兵団長はそう言って遠くを見る。
スピカ
「イマノルさんの時はどうだったの?」
イマノル「どうって?」
スピカ
「どっちが先に恋人作ったかって話」
イマノル「俺」
隠す素振りもみせずイマノルは即答する。
スピカ
「イマノルさん手がはやそーだもんね」
イマノル「俺はこう見えて紳士だって」
スピカ「それ昔も聞いたけど説得力皆無」
イマノル「ひどいなぁ。誤解だよ〜」
スピカ
「うちのお母さんと仲良いけど、手を出したりしてないよね?」
イマノル
「あーリンゴはそういう対象じゃなかったんだよね〜親戚だし腐れ縁的な……」
(リンゴに手をだそーもんなら導師と国王になにをされるか……)
考えるだけで恐ろしいとイマノルは内心苦笑する。
スピカ
「そっか……いいお友達なんだ」
イマノル
「いい友達かどーかは知らないけど」
じゃあね、とイマノルは去っていく。
スピカの事情をよく知るイマノルはスピカにとってよき相談相手だった。
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チレーナに会えないままゆっくりと日にちが過ぎていく。
イマノルの話だとチレーナは朝から夜遅くまで仕事に明け暮れているらしい。
女の子が会いにくるが全て突っぱね、仕事に専念しているそうだ。
この日もそうだった。
日はとっくに落ちているのに、タナンの高炉でもくもくと作業に没頭する若い山岳兵の姿。
その姿を見ると、ドクンと胸が高鳴った。
ーーどうして、この気持ちを抱いたらいけないの?
王太女でもない自分が、王女という身分なだけでどうしてチレーナ君を好きになったらいけないの?
「ーーあ」
チレーナの青い瞳がスピカの姿を映していた。
「スピカちゃん…」
気まずい空気が流れた。
スピカに恋人が出来た日から、2人は会っていなかった。チレーナが仕事に没頭していたからだ。
それも全てスピカを忘れるために、会うべきではないという苦しい理由であることをスピカも分かっていた。
分かっていたけれど…
スピカ
「……ごめんね、お仕事の邪魔しちゃって」
チレーナ「ーーーそんなことないよ」
スピカ
「えっと……これ……差し入れ。」
お菓子が入った包みをチレーナに差し出す。
差し出した手が無意識に震える。
ーー受け取ってけれなかったらどうしよう。
拒絶されたらどうしよう。
拒絶されても仕方ない状況を作り出したのは自分だというのに、覚悟もしてきたのに手の震えは止まってくれない。
チレーナはジッとスピカを見る。
手に持っていた仕事道具を置くと、ゆっくりと立ち上がりスピカの前までくると包みを受け取った。
チレーナ
「嬉しいよ。ありがとう」
久しぶりに見る柔らかな笑顔に、スピカは思わず泣きそうになる。
チレーナ「スピカちゃん?」
スピカ
「ごめ……チレーナ君に嫌われて受け取ってもらえないと思ってたから……」
チレーナ
「………………」
チレーナは小さく息を吐くと、
「俺がスピカちゃんを嫌いになるなんてあるはずがないよ」
大きな手がスピカの頭を優しく撫でる。
「俺のほうが嫌われたんだと思ってたよ」
スピカ
「私だってチレーナ君を嫌いになんてなれないよ。私の一番は、ずっとチレーナ君だよ!」
なんて自分は最低なのだろうとスピカは思った。
アモスという恋人が出来たというのに、自分勝手なのだろう。
そう思っても、スピカは自分の気持ちに嘘がつけなかった。
苦しげに気持ちを吐き出すスピカの姿にチレーナの目が見開かれる。
はぁ〜と大きなため息をつくとスピカを撫でていた手でチレーナは自分の顔を覆う。
チレーナ
「そんなこと……言ったらだめだって…」
屈強な山岳兵から出る言葉とは思えないほど
弱々しくて。
スピカ
「私の一番は子供の時からチレーナ君だった。
それを、結婚出来ないからってやめなきゃならないなんておかしいよ……」
チレーナ
「ーー俺だって、同じ気持ちだよ」
悲しげな告白は、夜の闇に霞んでいく。
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イマノルに教えてもらった例の場所で、チレーナとスピカは座ってお互い身を寄せ合い月を見つめていた。
かなり時間が経った頃、チレーナは口を開いた。
「俺は……山岳長子だから………いつかは誰かと結婚することになると思う」
スピカ「うん」
チレーナ
「………誰と結婚しても、俺の気持ちはきっと変わらない」
スピカ「……私も」
そっと手を繋ぎ、指を絡める。
2人はしばらくそのまま、ただ月を眺めていた。