リリー短編集 それが分かるのは自分も同じだから。 | エルネア王国モニカ国の暮らし。

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エルネア王国の日々の備忘録です。妄想もかなりあります。モニカ国。他のゲームの事も気ままに書いていこうと思います。
多忙のためのんびり更新中です。アイコンは旧都なぎ様のきゅーとなクラシックメーカーより。

任天堂Switch版エルネア王国をもとに書いています。


リリー視点の昔の短編集。
書くほどじゃないかも………とメモ欄に書き留めていた話や妄想だけしていた話など。


ーー毎度のことではありますがかなりの独自の考えの元に創作しています。

本編には関わりのないお話ですので、
エルネア王国の「エルネアらしさ」などを大切に思う方は閲覧をお控えください。

アメンバー記事にしてもいいのですが
けっこう読んでくれる方がいらっしゃるので普通の記事として出します。

登場人物
リリー・フォード
194年1日〜222年12日没
ローゼル近衛騎士隊 隊長
性格→負けず嫌い。ティアゴとは昔からの知り合い。


ティアゴ・バーナード
197年24日〜219年26日没
ガルフィン魔銃師会 魔銃導師
性格→一匹狼。リリーには昔から世話になったいるため逆らえない。リンゴと職場が同じでよく一緒に行動をしている。

゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――

それが分かるのはきっと
自分も同じだから。


このお話はバルナバ視点⬇️

*リンゴの脳内はやはり……となる脳内メーカー
あたりすぎて笑いそう


リンゴ視点⬇️
このリリー視点、のちに後のお話になります。

上記と被る内容は今回はかなり省略して書いています。


ーーーその日


禁断の遺跡に行こうとするとバルナバがダンジョンの前で神妙な表情を浮かべて立っていた。


入ろうとすると、バルナバは慌てて止めてきてあとから分かったことだが仮病まで使ってその場からリリーを引き離そうとした。


具合が悪いというのにバルナバはリリーを酒場に引っ張ろうとして、あとから合流したレイラに酒場に連れていかれる。


2人の態度は妙だった。


禁断の遺跡には、ティアゴのリンゴがいた。


ざわりと胸がざわついた。


リンゴは同じ職場のティアゴに好意を抱いていた。

いつもなら、仕事で一緒にダンジョンにいるのかもしれないと思うが、2人のいるダンジョンに入ろうとしたら嘘までついてそれを止めようとしたバルナバ、酒場に強制連行してきたレイラ。


明日がリンゴの結婚式ということもあって、リリーの胸のざわめきが大きくなる。

目の前にいるバルナバとレイラにそれを問うことは出来なかった。

自分の予想通りなら苦労させてしまい申し訳ない気持ちなる。




リンゴは帰宅時間から考えてダンジョンに居られる夜2刻までダンジョンに留まっていたらしい。


ソファーに座るリンゴは、感慨深そうに家の中を見渡している。

この家をその目に焼き付けるように。


殿下と結婚する娘が、過ちを犯すはずがない……ティアゴもそこまで馬鹿ではない。


(殿下はぼんやりしているように見えて、聡い方だから……必ずバレる)

だから何もないようにとリリーは祈った。


翌日の結婚式、リンゴは薄ピンクのウェディングドレスに身をまとい、可愛らしく美しい花嫁だった。

リンゴ側の友人筆頭が、ティアゴということがリリーの胸のざわめきを更に大きくする。

式が終わるとティアゴは緊張で疲れたらしくグッタリしているリンゴに差し入れをしていた。


一匹狼のティアゴがそこまで気にかけることがリリーは気になった…



不安を加速させたのはそのあと会ったエドモンドから聞いた話だ。


「そういえばティアゴさんは朝リンゴさんの側にいたようですよ。緊張しているリンゴさんを気遣ってだろうけど、本当にあの人は過保護ですねー」

嫁のセシィーからの情報という。

セシィーは魔銃師会所属ということもありティアゴとリンゴと仲が良い。ティアゴに関しては無理矢理ダンジョンに連行し、エドモンドの惚気話をえいえんに聞かせるというプレイをして煙たがられているらしい。

「エドモンドさんについてセシィーさんの次に詳しい奴になりそうですよ…」

酒場でティアゴが前にそう漏らしていたことがある。




ヤーノ市場にいくと、買い物をしているバルナバを見かける。チーズを購入していることからピッツァの材料調達らしい。


リリー
「こんにちは、今から禁断の遺跡に行かない?」

昨日は仮病まで使って拒否したバルナバはどう返すのか?

バルナバ
「うん、いいよ」

あっさりと快諾された。


リリー「………」

その態度に、やはり自分の予想は当たってしまっているのだろうと確信する。


バルナバは一体、何を知ってしまったの…?


バルナバはベラベラしゃべると男ではない。ましてやティアゴとリンゴの秘事となれば、殿下やリリーには決して口を割らないだろう。


リリー
「ごめん、また今度にする」


バルナバ「?!」

自分から誘っておいて、即座に中止するリリーにバルナバは眉を顰めた。


リリーはヤーノ市場から出て旧市街の川辺に向かう。

そこではティアゴが釣りをしていた。 

今日は休日ということもあり、珍しくダンジョンの外にいる。


リリー
「こんにちは」

釣りをしているティアゴの横に立つと、ティアゴは少し姿勢を正した。


ティアゴ
「こんにちは。娘さんご結婚おめでとうございます」


リリー「ありがとう。」


ティアゴ
「リンゴが王家に嫁いだからフォード家は安泰ですね」

一見、人当たりの良さそうな雰囲気だが、
警戒心の強い男。

山岳兵団と騎士隊と険悪になってから、敵を多く作った自覚からか親しい人以外とは世間話しかしない。

そんな風にさせてしまったのはリリーが原因なので申し訳なく思っていた。


ティアゴはリリーにとっても大切な弟分。
何かあればリリーは全力で守りたいと思っていた。ティアゴがリリーのために奔走してくれたように。



リリー
「……ねえ、ティアゴ。貴方を信用しているから聞くんだけど」


ティアゴ「なんですか?」


リリー
「リンゴには好きな人がいるみたいなの」


ティアゴ「…殿下以外、ってことですか?」

リリー「そう。心当たりない?」

訊ねると同時に、ティアゴへの牽制だった。


ティアゴ
「さあ……俺は知りません……気づきませんでした」

表情を変えず、思案しながら答えている。それが本当に心当たりを探しているように見えて、ティアゴの本心が分からない。


゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――

「リリー。本当にいいの?このままじゃ、本当にバルナバは彼女と結婚しちゃうわよ」

レイラの問いかけに、当時のリリーは極めて冷静に淡々と

「いいもなにも、私には関係ないから。」

゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――゜+.――

必死に本心を包み隠そうとしている自分とティアゴが重なった。


リリー
「そう……ティアゴなら知っているかと思ったんだけど。リンゴと仲良いから相談に乗っているかもしれないと思って」


ティアゴ
「もし……相談されていたとしても、それはリリーさんにでも内容は教えられません」

相談内容をたとえ相手の母親であっても安易に教えるような真似はしない。ティアゴは口の堅い人だった。


リリー
「ふーん……例えば言わないならダンジョンに監禁するって言っても?」


ティアゴ「ーー耐えてみせます」

緊張した面持ちで覚悟を示す。

リリーからしたらそこまで娘の相談事の内容を守りきるつもりなのかと疑問がわく…


リリー
「ティアゴは、リンゴのことどう思ってるの?」


ティアゴ
「可愛い後輩です」

淀みなくさらりと答える。

「真面目にダンジョンに通ってますし、一生懸命仕事に取り組んでます。流石リリーさんとジェレマイアさんの娘ですね」


リリー「そう…」



ティアゴ「俺そろそろダンジョンに……」

釣り道具を片付け始める。

面倒な質問から逃げるためなのか、本当にダンジョンに行く予定があったのか……両方だろう。


リリー
「もしもリンゴがティアゴのことを好きって言ったらどうする?一晩一緒に過ごしてほしいって言われたら」

この質問にはティアゴもさすがに驚きを隠さなかった。

質問したリリー自身、何を聞いているんだと一瞬思ったが口にしてしまえば取り消せない。じっと相手の反応を待つ。



ティアゴ
「……リリーさんらしくない質問ですね?」

リリーをマジマジと見つめ、真面目な近衛隊長がそんな戯言をわざわざ言いにくるなんてと言いたげに苦笑した。


リリー「ーー答えて」

静かな口調。だが言葉には険しさがこもっている。


ティアゴ
「そんなこと、あるはずないじゃないですか」

リリー「もしもの話」

ティアゴ
「ご存知だと思いますがリンゴはけっこう人気があります。俺みたいな年上じゃなくてもっと年の近い相手がいくらでもいると思います」


リリー「だから、もしもの話だとして」

答えないことなど許さないという目でティアゴを睨む。

ティアゴがモテることはリリーは知っている。
しかし一匹狼のティアゴはなびかず女性たちが玉砕しているという。


ティアゴ
「リンゴみたいな女の子に言い寄られたらグラグラしそうではありますけど……」

視線を逸らせながらティアゴは言う。リリーの娘であるリンゴを立てつつだからといって誘いに乗らないと遠回しに答えている。


リリー
「貴方前にリンゴかいいならウェルカムとかなんとか言ってたね?忘れたとは言わせないよ」

言いよるような行動を取っていたのはティアゴも同じだろう、とリリーは言っている。

ティアゴ「あれは……」


リリー「酔っ払いのジョーク?」


ティアゴ
「あの場で冗談だと言ったはずです。リリーさんが心配するような意味では言っていませんからご安心を」

さぁぁっ風が吹き、草木を揺らす。

小鳥のさえずりが近くで聞こえる。


この答えでリリーが納得していないのでティアゴは真っ直ぐリリーの目を見て口を開いた。


「俺はリンゴの先輩ですから……彼女の幸せを一番に考えます。俺がその邪魔になるようなことはできません」

真摯な目で、キッパリと言った。



一晩一緒に過ごしてほしいと言われたら……

この質問に対してのティアゴの回答。


リリー「……そっか」

何かを思い、瞼を閉じた。


ティアゴ
「じゃあ、俺ダンジョンにいってきます」


リリー
「うん……気をつけてね」

ダンジョンに向かうティアゴの背中を見送りながらリリーは小さく息を吐いた。


ティアゴは淀みなく、なんの動揺もなく表情も変えず答えた。

第三者が聞いていたら「優しい先輩」としか思わないだろう。


でも


『俺はリンゴの先輩ですから……彼女の幸せを一番に考えます。俺がその邪魔になるようなことはできません』


バルナバを想うかつての自分の全く同じ考えかただった。


前にみたリンゴとティアゴが話している時……

2人は本当に楽しそうで、幸せそうで……ティアゴがリンゴに向ける表情は柔らかくてあんな表情をリリーは普段見たことがなかった。

その目に宿しているのは

友情?親愛?情愛?


(ーーーティアゴ……貴方がどんなに澄ました顔で答えても、私には分かるの…

だって、かつての自分も……同じだったから)


ティアゴが向かった方向とは反対方向に向かってリリーは歩き出した。